四心多久間四代見日流

四心多久間四代見日流について

四心多久間四代見日流（ししんたくまよんだいけんにちりゅう）は、富山藩で培われた独自の柔術流派です。この流派は、柔術という呼称ではなく「和（やわら）」という表現が用いられており、指導内容には剣術や十手術、鎖術など、多彩な技法が含まれています。このため、四心多久間流や見日流和術という略称でも呼ばれることがあります。

歴史と伝承

四心多久間流の起源には伝教大師（最澄）が遠祖として記されています。流派名の「四心」は、『唯識論』に登場する自性身、受用身、自受用身、変化身の四つの状態を指し、「四代」はこの流派が4代目から武家に伝わったことを意味します。この流派の伝承によると、「四心」は東西南北を示し、「多久間」はそれらの隅を表現しており、隙の無い体を意味しています。江戸時代には富山藩の藩校・廣徳館での指導が行われていました。

歴史的には、天和年間（1681-1684）に足立平陸正保（足立文五郎）から富山に伝わり、渡辺繁正がその技術を広め、大きく二つの系統が現存しています。これらの系統は、相手の急所を攻撃する「当身技」と関節技を同時に駆使することが特徴的で、太刀による攻撃への護身術としても役立ちます。多くの富山藩士や配置薬業者がこの流派を学び、技を磨いてきました。

柔術獨習書

明治時代、七代目師範の古木源之助によって、流派の形を詳しく解説した『柔術獨習書』が出版されました。この系統では足立文五郎正隆を元祖とし、流派名の由来は「四忘」から来ているとされています。この「四忘」とは、身を忘れ、生を忘れ、死を忘れ、敵中に入って敵の存在を忘れるという四つの心の状態を表しており、長い修行を経てその技術が研ぎ澄まされていくことを示しています。古木源之助は栃木県に道場を設立し、若者に柔術を指導し、後には柔道教師としても活躍しました。

現在の伝承状況

現在は、旧富山藩士の黒田家から伝わる系統と、それから分かれた高岡義孝の系統の二つが存在しています。前者は埼玉県の黒田鉄山が、後者は富山県の清水万象の弟子が伝承しています。また、清水万象の弟子である青江豊二が主催する「柔術研究会」は、現存する唯一の活動団体と言えます。

系譜と技法

四心多久間流の伝系には多くの名前が挙がりますが、代表的なものに足立平陸正保、渡辺繁正、山田忠兵衛などがいます。技法には、相手の動きを瞬時に感じ取り、巧みに対応するための当身技や関節技が多く含まれています。

型

この流派には多岐にわたる型があり、振武舘黒田道場で伝わる形の一部を以下に示します：

• - 表居取

- 一本目：朊の巻
- 二本目：腰の剣
- 三本目：切掛
- 四本目：奏者捕

また、清水万象系では134本の形が伝承されており、肮之巻・虎乱之巻・八方搦・刀之巻など、技の体系がしっかりと整備されています。例えば、肮之巻は居合からの攻撃を者の無手で抑える技を、虎乱之巻は立合からの無手攻撃に対する対処法を扱っています。

関連史跡

富山には足立平陸正保を称える「足立塚」があります。これは1842年に彼の功績を後世に残すために建立され、高さ約2メートルの塚が多目的広場の中心に位置しています。これらの伝承や技術が長い歴史を経て、今もなお現存していることは、この流派の価値を証明するものです。

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