四酸化ルテニウム

四酸化ルテニウム：その性質、合成、用途

四酸化ルテニウム (RuO4) は、ルテニウムの酸化物であり、組成式RuO4で表される無機化合物です。通常は無色の揮発性液体ですが、不純物の混入により黒色に見えることも多く、四塩化炭素などの溶媒に溶解して安定な状態を保ちます。その強力な酸化力と特異な性質から、様々な分野で重要な役割を果たしています。

合成法

四酸化ルテニウムは、塩化ルテニウム(III)水溶液を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化することで合成されます。この反応は、過ヨウ素酸イオンがルテニウム(III)イオンをルテニウム(VIII)イオンまで酸化し、四酸化ルテニウムが析出する過程です。反応式は以下の通りです。


8 Ru³⁺(aq) + 5 IO₄⁻(aq) + 12 H₂O(l) → 8 RuO₄(s) + 5 I⁻(aq) + 24 H⁺(aq)


この反応では、ルテニウムイオンの酸化数が+3から+8へと大きく変化し、強力な酸化剤である四酸化ルテニウムが生成されます。

分子構造

四酸化ルテニウム分子は、ルテニウム原子を中心とした四面体構造をしており、ルテニウム原子と酸素原子間の結合距離は169～170 pmです。この構造は、ルテニウム原子が酸素原子と強い二重結合を形成していることを示唆しています。

用途

四酸化ルテニウムの強力な酸化力と揮発性という特異な性質は、様々な分野での応用を可能にしています。主な用途としては以下のものが挙げられます。

ルテニウムの精錬: ルテニウムを含む鉱石から金属ルテニウムや他のルテニウム化合物を得る際の重要な中間体として利用されます。白金族元素はしばしば混合物として存在するため、四酸化ルテニウムの揮発性を用いて他の元素から分離精製が行われます。具体的には、塩素酸化抽出物を蒸留することで、四酸化ルテニウムと四酸化オスミウムが揮発し、他の白金族元素から分離されます。その後、電気化学的手法や塩酸による還元によって、四酸化オスミウムからルテニウムが分離されます。

有機化学: 四酸化ルテニウムは、酸化オスミウム(VIII)や過マンガン酸カリウムよりも強力な酸化剤として、有機化合物の酸化反応に用いられます。その高い酸化力は、選択的な酸化反応を実現する上で非常に有用です。

* 指紋検出: 四酸化ルテニウムは、皮膚の油脂と反応して茶色または黒色の[二酸化ルテニウム]を生成します。この性質を利用して、指紋の検出試薬として用いられています。

安全性

四酸化ルテニウムは、強い酸化力を持つため、取り扱いには注意が必要です。皮膚や粘膜への刺激性、吸入による毒性があります。取り扱い時には、適切な保護具を着用し、換気の良い場所で作業を行う必要があります。

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