団体委任事務

団体委任事務とは

団体委任事務（だんたいいにんじむ）とは、1999年まで日本の地方自治制度において存在した事務区分の一つです。国が法律や政令で定めるところにより、特定の行政事務を地方公共団体そのものに対して実施を委ねる形式の事務でした。この制度は、同じく国から地方の「機関」（知事や市町村長など）に委任される機関委任事務と同時に、1999年に行われた地方分権関連の法改正によって廃止されました。現在は、かつての団体委任事務と機関委任事務の一部が統合され、「法定受託事務」という新たな区分に位置づけられています。

特徴と性質

団体委任事務が持っていた最も重要な特徴は、それが地方公共団体自身の事務として扱われたという点にあります。機関委任事務が、受託した地方の機関が国の指揮監督を受けて国の事務として執行する性格が強かったのに対し、団体委任事務は、事務が地方公共団体そのものに委ねられることで、その事務の遂行は地方自治体の権限に基づくものと解釈されました。この「地方公共団体の事務」であるという位置づけは、制度運用上、地方議会が関与できるという重要な違いを生じさせました。

地方公共団体の事務であるため、議会が条例を制定して具体的な執行方法を定めたり、関連予算を審議・議決したりすることが可能でした。これは、国の事務と見なされた機関委任事務では原則として地方議会の関与が限定されていたことと対照的です。

これらの事務の執行にかかる費用については、国がその一部または全部を負担する仕組みとなっていました。

機関委任事務との対比

団体委任事務と機関委任事務の最も大きな違いは、事務の委任先と、それが誰の事務と見なされるかという点にありました。

機関委任事務: 地方公共団体の機関（首長など）に委任 → 国の事務と見なされる
団体委任事務: 地方公共団体そのものに委任 → 地方公共団体の事務と見なされる

この違いから、先述の議会関与の可否に加え、事務の執行に関する訴訟が発生した場合の被告や、住民監査請求の対象となるか否かなど、地方自治体の責任や権限の範囲が異なりました。

制度の変遷：廃止から法定受託事務へ

団体委任事務制度は、1999年に施行された地方分権一括法により、機関委任事務とともに廃止されました。

この法改正は、国と地方の関係を対等なものに見直し、地方自治体の自主性・自立性を高めることを目的としていました。かつての機関委任事務と団体委任事務は再整理され、現在は法定受託事務という区分に包括されています。法定受託事務は、国の基準に従って処理すべき事務でありつつも、その執行は地方公共団体の責任において行われます。団体委任事務が廃止され法定受託事務へ移行したことは、地方分権改革の進展を示す重要な一歩でした。

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