国境パズル

国境パズルとは

国境パズル（こっきょうぱずる、英: The border puzzle）とは、国境が貿易におよぼす影響をデータ分析により明らかにした現象で、人々の直感を超える大きな負の効果が浮かび上がることを指します。1995年にジョン・マッカランが提唱し、その後、ボーダー・パズル、または貿易の自国市場バイアス・パズルなどの呼称も生まれました。この現象は、国際貿易に関連する国境の影響を示す{f 国境効果（The border effect）}と称されることもあります。

国境パズルの背景

ジョン・マッカランはアメリカとカナダの州間の双方向貿易データを使用し、重力モデルを基に実証研究を行いました。この分析によれば、州間の距離や州の経済規模を考慮に入れても、カナダ内の貿易額はアメリカ・カナダの間で行われる国際貿易額の約20倍に達しました。この結果は、我々が一般に考えるよりもかなり国境の影響が大きいことを示唆しています。

マッカランは1990年に出版された大前研一の著作『ボーダーレス・ワールド』から、「国境は効果的に消え去った（borders have 'effectively disappeared'）」という表現を引用しています。グローバル化が進む現代において、国境の影響が軽視されがちですが、データを持ってこの問題を考察すると国境が貿易に与える影響が実際には予想以上に大きいことがわかります。

国境効果の要因

国際貿易においては、様々なコストが関与しており、これが国境効果の主要な原因です。例えば、税金や非関税障壁、言語や文化の違い、輸送コストなどが挙げられます。また、国家間の法律や規制、貿易協定の違いも貿易の障害になる要因です。これらの要素が、国境を越えた取引を難しくし、その結果として国境パズルが生じるのです。

興味深いことに、アメリカの州内取引と州間取引のデータを分析した結果、州内の取引額が州間の取引の約4倍になることが示されています。この点からも、単なる国境の効果に留まらず、州間の境界においても類似の現象が見受けられることが確認されています。これを州境効果と呼ぶこともあります。

さらなる考察

国境パズルの発生に関して、ジェームズ・アンダーソンとエリック・ヴァンウィンクープは、カナダの経済規模がアメリカよりも小さいため、その影響が国際貿易において顕著に表れると指摘しています。また、マッカランの重力モデル推定において省略されている「遠隔度（the remoteness）」という要因に関する考慮が不足しており、これが省略変数バイアスを引き起こしているとも述べています。

国際経済学における位置づけ

経済学者モーリス・オブストフェルドとケネス・ロゴフは、国際経済学の重要なテーマである6つのパズルのうちの1つとして、この国境パズルを挙げています。また、国境効果は財の国際取引だけでなく、旅客輸送にも影響を及ぼすことが示されています。つまり、国境の存在は、貿易や旅行を含むさまざまな経済活動において重要な要因となっています。

国境パズルの研究は、国際貿易の理解を深めるために欠かせないものであり、今後もますます多くの研究が期待されるテーマです。

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