日本の国家安全保障戦略:平和と繁栄のための指針
国家安全保障戦略(NSS)は、日本の安全保障政策における羅針盤です。
2013年、第二次安倍内閣によって初めて策定され、その後
2022年には
岸田内閣によって改定されました。それぞれの改定は、国際情勢の変化を反映し、日本の安全保障上の課題と対応策を明確に示しています。
2013年版:積極的平和主義に基づく戦略
2013年版では、「積極的平和主義」を理念として掲げ、国際社会への貢献を重視しました。当時の国際情勢を踏まえ、中国の
軍事動向を懸念事項として明記。
外交、
防衛両面における基本方針を示した、
日本国憲法体制下における初めての国家安全保障戦略となりました。
具体的には、日米同盟の強化、国際協力の推進、そして国内基盤の強化という三本柱で日本の安全保障を構築することを目指していました。
2022年版:新たな安全保障環境への対応
2022年版では、中国の台頭、北朝鮮のミサイル開発、ロシアのウクライナ侵攻など、安全保障環境の激変を背景に、より強固な安全保障体制の構築が目指されました。
具体的には、以下の点が大きな変更点として挙げられます。
敵基地攻撃能力の保有: これまで曖昧だった敵基地攻撃能力について、事実上の保有を容認する方向に転換しました。これは、ミサイル攻撃への抑止力強化を目的としています。
防衛費の大幅増額: GDP比1%を超える
防衛費への増額を決定。これは、装備近代化や人員増強など、安全保障体制の抜本的な強化を示しています。
反撃能力の保有: 敵の攻撃を受けた場合に、攻撃元を反撃する能力を保有することを明確に示しました。これは、抑止力の強化と国民の安全確保を目的としています。
経済安全保障: サプライチェーンの多様化やサイバーセキュリティ強化など、経済面からの安全保障も重視する姿勢を示しています。
国際社会との連携
NSSは、日米同盟の強化を最優先課題として位置付けています。また、インド太平洋地域における多国間協力の促進にも力を入れており、自由で開かれたインド太平洋戦略の実現に貢献することを目指しています。
国内基盤の強化
安全保障政策の推進には、国民の理解と支持が不可欠です。NSSは、国民への情報発信や、安全保障教育の推進などを盛り込み、国民と政府の連携を強化することを目指しています。
韓国との関係
2022年版では、韓国を「重要な隣国」と位置づけつつも、竹島を日本固有の領土と明記した点が、韓国政府から強い抗議を受けました。この点は、日韓関係における懸念材料の一つとなっています。
結論
国家安全保障戦略は、日本の安全保障政策の根幹をなす重要な文書です。国際情勢の変化に合わせて、常にその内容を見直し、対応していく必要があります。日本の平和と繁栄のために、国民全体の理解と支持が不可欠であり、今後の更なる議論と検討が求められます。