国家統計局 (イギリス)

国家統計局(ONS): 英国の統計情報を支える中枢機関

国家統計局（Office for National Statistics、略称ONS）は、英国における経済、人口、社会に関する統計情報の作成と公表を担う主要機関です。イギリス統計理事会という非内閣構成の政府機関の監督下にあり、英国議会に直属する独立性の高い組織として機能しています。国民生活や政策決定に欠かせない多様な統計データを網羅的に提供することにより、英国社会に貢献しています。

ONSの主要業務

ONSの主要業務は、以下の3点に集約されます。

1. 統計データの収集: 英国全土から多岐にわたる統計データを収集します。対象分野は、経済、人口、社会のあらゆる側面に及びます。データ収集方法は、調査、登録、行政記録の活用など多様で、データの精度と信頼性を確保するための厳格な手続きが遵守されています。
2. 統計データの分析: 収集された膨大なデータを高度な統計手法を用いて分析し、分かりやすく解釈可能な情報に変換します。分析結果は、社会動向の把握や政策立案に役立てられます。
3. 統計データの公表: 分析された統計データは、一般公開されます。公表方法は、公式ウェブサイト、出版物、報道発表など多様で、情報アクセスの容易性を重視しています。データの透明性とアクセス可能性を確保することで、社会全体の理解促進に努めています。

組織と役割

ONSは、国家統計官を長とする執行機関です。国家統計官は、イギリス統計理事会の最高経営責任者も兼任し、ONSに統計に関する助言を提供するだけでなく、政府全体の統計関連機関の調整役も担っています。このため、ONSは政府統計サービスの要として機能しており、その権威と独立性は広く認められています。

ONSは、スコットランド、北アイルランド、ウェールズといった地方政府と連携しながら、英国全体の統計情報を包括的に管理しています。ただし、一部の統計分野については、それぞれの地方政府に権限が委譲されています。

歴史

ONSは、1996年に中央統計局と人口センサス調査局が統合されることで設立されました。その後、2008年には、統計及び登録サービス法の施行に伴い、イギリス統計理事会が非内閣構成の機関となりました。これにより、ONSの独立性がさらに強化され、政府からの不当な干渉を受けることなく、客観的で信頼性の高い統計情報の提供に専念できるようになりました。

データ収集の範囲

ONSが収集するデータは、多様な分野を網羅しています。主な分野を以下に示します。

農業と環境: 農業生産、環境保護、気候変動に関するデータ
ビジネスとエネルギー: 企業活動、エネルギー消費、投資に関するデータ
子供・教育・技能: 教育水準、技能習得、子供の福祉に関するデータ
犯罪と裁判: 犯罪発生状況、裁判手続き、司法制度に関するデータ
経済: GDP、物価、雇用、貿易に関するデータ
行政: 行政運営、公共サービスに関するデータ
保健とソーシャルケア: 保健状態、医療サービス、社会福祉に関するデータ
労働市場: 雇用状況、失業率、賃金に関するデータ
人と場所: 人口分布、住宅状況、地域社会に関するデータ
人口: 出生率、死亡率、人口動態に関するデータ
* 旅行と交通: 交通量、交通事故、観光に関するデータ

ONSは、これらのデータ以外にも、様々な分野の統計情報を収集・分析・公表しています。これらのデータは、政府機関、研究者、企業、そして一般市民など、幅広い利用者の意思決定や政策立案に役立てられています。

ONSと政府統計サービス

ONSは、政府統計サービス(GSS)の中核を担う機関です。GSSは、政府全体における統計情報の質を確保し、統計情報の信頼性を高めることを目的とした組織です。ONSは、GSSにおける専門性を活用して、政府機関と協力し、質の高い統計情報の提供に貢献しています。

まとめ

ONSは、英国社会における統計情報の基盤として、重要な役割を果たしています。その独立性、専門性、透明性は、英国社会の信頼を得ており、今後も社会の進歩に貢献していくことが期待されています。

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