国府宮はだか祭

国府宮はだか祭：厄災を一身に背負う神男の壮絶な神事

愛知県稲沢市に鎮座する尾張大国霊神社（国府宮）の境内では、毎年旧暦の正月13日から翌朝にかけて、県指定の無形民俗文化財である国府宮はだか祭が執り行われます。この祭りは、古来より伝わる儺追神事（なおいしんじ）で、厄災や穢れを神男（しんおとこ）と呼ばれる一人の男性が一身に背負い、それを土餅（どべい）と呼ばれる餅に移して土に埋めることで、村全体の厄落としを行う、独特の儀式です。

神男の選出と精進潔斎

神男は、志願者の中からくじ引きによって選ばれます。選ばれた神男は、祭りの3日前から国府宮境内の儺追殿（なおいでん）にこもり、精進潔斎に励みます。この期間、神男は身を清め、神聖な儀式に備える重要な時間となります。

興奮と熱狂のクライマックス

旧暦正月13日の午後、境内は熱気に包まれます。下帯姿の男たちが地区ごとに集まり、儺追布（なおいぎれ）が結び付けられた儺追笹（なおいざさ）を国府宮拝殿に奉納します。境内は、神男の登場を待つ数千人の男たちで埋め尽くされ、緊迫感と期待感が高まります。午後3時より始まる儺追神事の祭典後、いよいよ神男の登場です。神男が群衆の中に飛び込むと、厄から逃れようと願う男たちが殺到し、凄まじい押し合い、へし合い、揉み合いが繰り広げられます。神男は、まさに村全体の厄難を一身に受けて、揉みくちゃにされます。神男が儺追殿へ引きずり込まれるまでが、この祭りのクライマックスであり、最も重要な瞬間です。

夜儺追神事：厄払いの完遂

前日の興奮が冷めやらぬ翌朝午前3時、夜儺追神事（よなおいしんじ）が行われます。神職は、あらゆる罪穢を封じ込めた土餅を神男の背に背負わせます。そして、桃と柳の小枝で作った礫を神男に投げつけ、境内から追放します。神男は、暗闇の中、後ろを振り返ることなく土餅を捨て、帰宅します。神職は、捨てられた土餅を土に埋めることで、厄払いを完了します。この夜儺追神事は、国府宮はだか祭で最も重要な神事とされています。なお、神男を追い払う際に投げつけられた礫は灰にされ、翌年の土餅に混ぜ込まれるという、独特の風習も受け継がれています。

約半月間にわたる関連行事

国府宮はだか祭に関連する行事は、旧暦の正月2日から同14日まで、約半月間にわたって執り行われます。この期間中、様々な神事が行われ、地域住民の生活に深く根付いた信仰と伝統が感じられます。

まとめ

国府宮はだか祭は、神男が村全体の厄を一身に背負い、それを土に返すことで、村の安全と豊作を祈願する、壮絶で神秘的な祭りです。現代社会においても、人々の信仰と伝統を強く感じさせる、貴重な無形民俗文化財と言えるでしょう。その勇壮な様は、多くの見物客を魅了し続けています。 神男の献身的な行為と、群衆の熱狂的な参加が織りなす、この独特の祭りは、日本の伝統文化の深さと豊かさを伝える貴重なものです。

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