国民体力法

国民体力法について

国民体力法（こくみんたいりょくほう）は、昭和15年（1940年）4月8日に公布され、同年9月26日に施行された日本の法律です。この法律の主要な目的は、未成年者の体力向上と結核の予防を推進することです。具体的には、満17歳から19歳（1942年の改正後は25歳）の男子を対象に、毎年定期的な身体・体力検査が行われるようになりました。また、結核の検診も重視されるようになりました。

法律の目的と背景

国民体力法は、当時の健康状態や体力の低下問題に対処するために制定されました。1930年代の日本では、特に徴兵検査での身体測定結果から「壮丁（そうちょう）の体位低下」といった問題が指摘されていました。これに対処するため、陸軍医務局長であった小泉親彦は、国民の健康と衛生の向上を目指し、独立した「衛生省」の新設を提案しました。この働きかけが実を結び、1938年には厚生省が設置されるに至りました。

その後、厚生省は国民体力管理制度の制定に向けて調査を開始し、1939年末には「国民体力管理法案」が取りまとめられました。この法案は1940年の第75帝国議会で提案され、その後、名称から「管理」の文言を除去するなどの修正が施され、可決されたのです。

体力検査とその内容

国民体力法に基づいて実施された体力検査は、男子の体力状態を詳細に測定するものでした。身体測定や体力テストを通じて、参加者の体力が客観的に評価され、その結果に基づいて健康指導が行われました。また、体力の向上だけでなく、当時特に重要視されていた結核予防に関しても、検診が定期的に実施され、それに関する保健指導が行われることになりました。

1942年の改正では、この法律の対象が拡大され、乳幼児を対象とした体力検査と保健指導が追加されました。この改正により、国民は幼少期からの健康管理が重要であることを認識することになり、乳幼児体力手帳制度も設けられました。これは、子供たちの健康を追跡するための重要なツールとなりました。

国民体力法の廃止

しかし、国民体力法は長くは存続せず、厚生省関係法令の整理に関する法律により廃止されることとなりました。この法律の廃止は、国民の健康や体力に対する政策が変化したことを示しており、戦後の日本社会における保健衛生政策の方向転換を反映しています。

参考と関連項目

国民体力法の制定や運用に関しては、多くの研究や考察が行われています。例えば、森川貞夫による『15年戦争と国民の「体力」』という研究では、この法律の社会的背景や意義が詳細に分析されています。

また、国民体力法と関連の深い「健民運動」や「健民修錬所」といった概念も、当時の国民の健康意識や体力向上の取り組みを理解するための重要な要素です。これらの運動や施設は、国民の体力や健康を促進するための取り組みとして、歴史的に重要な役割を果たしました。

今後、このような法律や制度がどのように変化し、国民の健康に寄与していくのかを見ることは、歴史を学ぶ上でも重要な視点となるでしょう。

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