国民保養温泉地

国民保養温泉地：日本の豊かな温泉資源と地域活性化の象徴

国民保養温泉地とは、日本の温泉資源を最大限に活用し、国民の健康増進と観光振興に寄与することを目的として、環境大臣が温泉法に基づき指定する温泉地です。単なる温泉地の集積ではなく、温泉の質、周辺環境、そして将来的な地域活性化への貢献までを総合的に評価した上で指定が行われます。

指定基準：温泉の質と地域環境の両面から評価

国民保養温泉地の指定基準は、大きく分けて「源泉に関する条件」と「温泉地に関する条件」の2つから構成されています。

源泉に関する条件は、温泉の効能の高さ、湧出量、湧出温度といった、温泉自体の質に焦点を当てた評価です。良質な温泉が豊富に湧出する必要があることは言うまでもありません。

一方、温泉地に関する条件は、温泉地の環境の安全性、周辺景観の美しさ、保養地としての環境整備の充実度などを総合的に評価するものです。具体的には、温泉を利用した医療設備やスタッフの充実度、交通アクセス、災害に対する安全対策などが考慮されます。

2012年の指定基準改訂以降は、温泉そのものの評価に加え、自然環境、まちなみ、歴史、風土、文化といった地域資源の活用、そして将来的な地域づくりへの貢献も重要な評価項目となっています。単に温泉を楽しむだけでなく、地域全体の魅力を高めることが、国民保養温泉地としての要件となっているのです。

多様な温泉地と指定の変遷：歴史と発展

1954年に最初の3箇所の温泉地が指定されて以来、国民保養温泉地は着実に増加してきました。2017年時点で97箇所、2019年時点で80箇所が指定されています。歴史ある由緒正しき温泉地から、比較的最近開湯した温泉地まで、実に多様な温泉地が国民保養温泉地として認められています。

中には、指定後に観光開発を進めるため、自ら指定を返上する温泉地もあります。また、市町村合併などにより、既存の国民保養温泉地の範囲が拡大されるケースも見られます。このように、国民保養温泉地の指定は、常に変化し発展していく日本の温泉文化を反映していると言えるでしょう。

担当省庁についても、当初は厚生省が担当していましたが、1971年の環境庁発足後は環境庁、そして2001年の環境省への移行後は環境省が指定を行っています。

近年では、2015年に大分県の竹田温泉群と神奈川県の芦之湯温泉、2019年に山形県のあつみ温泉が新規に指定されるなど、新たな温泉地が国民保養温泉地に加わっています。

関連指定制度：国民保健温泉地とふれあい・やすらぎ温泉地

国民保養温泉地に加えて、高齢化社会や都市化の進展を背景に、温泉の保健的効能の活用促進や自然とのふれあい、安らぎの提供を目的とした関連指定制度も存在しました。

国民保健温泉地は、国民保養温泉地のうち、特に温泉の保健的利用を促進できる温泉地を対象とした指定制度で、1981年から1995年まで実施されました。

ふれあい・やすらぎ温泉地は、都市化の進展に伴い高まる自然とのふれあい、安らぎを求めるニーズに対応するため、国民保養温泉地のうち、自然とのふれあい、自然の中で安らぐことに適した温泉地を対象とした指定制度で、1993年から2004年まで実施されました。

まとめ：国民保養温泉地の意義と展望

国民保養温泉地は、日本の貴重な温泉資源を守り、活用するための重要な制度です。温泉の質だけでなく、周辺環境や地域社会への貢献も評価することで、持続可能な観光開発と地域活性化に大きく貢献しています。これからも、国民保養温泉地は、日本の温泉文化を象徴する存在として、人々の健康と幸せに貢献していくでしょう。

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