国王大権 (イギリス)

イギリスの国王大権とは

イギリスにおける国王大権（Royal Prerogative）とは、君主が持つ特権や権限のことで、通常は慣習に基づいて行使されます。この大権は、政治的決定の多くが君主の名の下で行われるため、政府の行政権に重要な影響を持ちます。しかし、近代以降、実際の権限の行使は首相や内閣の助言に基づき、君主自身が独力で行使する場面は極めて稀となりました。

国王大権の歴史的背景

国王大権は、歴史的には君主の独占的な権限として始まりました。13世紀以降、イングランドの君主たちは絶対的な権力を持っていましたが、14世紀と15世紀の封建的騒乱がその権限を制限しました。時代が進むにつれて、君主は議会の承認を得ることが必須となり、権限が段階的に縮小されていきました。特に、名誉革命（1688年）以降は、議会の力が強まり、権利章典によって君主の権限はさらに制約されました。

様々な国王大権の内容

国王大権には法案の裁可、議会解散、貴族の任命や栄典授与、軍の最高司令官としての権限などが含まれます。たとえば、君主は法律を承認する権限を持っているものの、実際には議会からの承認を受けて行使されており、拒否されたことは1718年以降ありません。

また、議会を解散する権限は、2011年以降、議会任期固定法によって制限されましたが、2022年にはその権利が復活しました。このように、国王大権の行使は慣習に基づいており、現代では通常、政府の承認を要します。

大権の法的及び政治的制約

国王大権が行使される際には、様々な法律や慣習による制約が存在しています。これにより、国王が単独で行動することはほとんどなく、大権が行使されることは政府の助言に従ったものであることが通例となりました。実際、国王が権力を独自に行使する場合は、非常に限られた状況に限られています。

特に、礎となる法律によって大権の利用が制約される場面が増えてきました。たとえば、国王大権が既存の法律と矛盾する場合、法律の規定が優先され、その権能は行使されません。このため、国王大権は名目上は君主のものとされつつも、実際には内閣の指導に従ったものであり、政府の政治権限を覆い隠す法的な擬制として見なされています。

現代における国王大権の位置づけ

今日において、国王大権は依然としてイギリス政府における重要な要素でありながら、政府の助言に依存する形で行使されることが大半です。外交や国防に関わる大権は特に重要であり、これに関連する権限は国王に付与され続けています。しかし、内部行政の権限は主に首相や大臣によって行使されており、国王の実権は大幅に制限されています。

国王大権の廃止に向けた試みもありましたが、現状では根強く残っており、近年の動きは成功には至っていないのが実情です。多くの権限は依然として慣習に基づいており、大臣の助言を受けて行われるのが一般的です。今後も国王大権がどのように変化していくかは、イギリスの政治の重要な焦点の一つであり続けるでしょう。

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