国盗り物語

国盗り物語

『国盗り物語』は、著者「司馬遼太郎」による戦国時代を舞台にした歴史小説です。この作品では、岐阜県美濃を中心に、一介の油売りから成り上がった斎藤道三と、圧倒的な軍略をもって天下統一を目指す織田信長に焦点を当てています。1963年から1966年にかけて『サンデー毎日』誌に連載された後、1966年には書籍として出版され、今なお多くの読者に親しまれています。

概要

本書は、司馬遼太郎の代表作の一つであり、戦国時代における道三の壮大な「国盗り」の物語と、信長の台頭を描いた二部構成になっています。道三編では、美濃の実権を握り、歴史を動かすために果敢に行動を起こす男の姿が描かれています。一方、信長編では、道三の死を境に信長が美濃を併呑し、新しい時代を切り開いていく苦悩が描かれます。特に信長の視点からの描写が光秀というもう一人の主人公を通じて行われ、実に深い知見を与えてくれます。

あらすじ

斎藤道三編

物語は、道三こと松波庄九郎が「国主になりたい」という狂気とも言える夢を抱いて京を目指すところから始まります。かつては僧侶であった庄九郎は、堅苦しい寺の生活に飽き、自由を求める欲望から還俗し、牢人となります。その後、京の油問屋を継いで成功を収めますが、彼の根底にあるのはあくまでも「国盗り」という野望です。

彼は美濃国の守護である土岐氏の元を訪れ、巧妙な策略で信任を得て、徐々に権力をかき集めていきます。道三は最後には土岐氏を追放することに成功し、美濃の実権を握ります。その手法は冷徹で時には陰謀も交え、多くの敵を作ることになりますが、彼の才智から周囲は次第に恐れを抱き始めます。これを利用し、『蝮（まむし）』という異名を持つことになります。

道三は権力を手に入れた後、美濃の政治改革を推し進め、中世的な秩序を破壊しようと明敢に行動します。出自にかかわらず人材を登用し、自由な経済活動を奨励する「楽市楽座」を実現させようと挑戦しますが、彼の改革には反発も多く、最終的には再び出家することを決意するに至ります。

織田信長編

続いて描かれるのは、道三の娘婿として知られる織田信長の物語です。信秀の急死後、道三に期待されることになりますが、若き信長は「うつけ殿」と称され、周囲の期待を裏切る奇行が続きます。しかし、道三は彼の中に潜む才能を見抜き、教育を重ねていきます。

信長は次第に大名としての素質を発揮し、桶狭間の戦いでの大勝は彼の名声を一気に高めます。この革新者としての姿勢が、後の天下統一の道をつむぐ基盤となっていきます。信長は道三が望む形で美濃を攻略し、続いて新しい秩序を築き上げようとしていきます。

主要な登場人物

この物語で描かれるキャラクターたちは、実在の歴史人物だけでなく、創作による人物も多く含まれます。道三を支える家臣や、信長の側近たちの関係性も興味深く、彼らの思惑が絡むことで物語がさらに深みを増しています。

結論

『国盗り物語』は斎藤道三と織田信長の興亡を描く中で、戦国時代の複雑な人間関係や野望を生き生きと描写しています。司馬遼太郎は巧みな筆致で、各キャラクターの内面を浮き彫りにし、彼らの運命を運ぶ力を失わない限り、この物語の魅力は尽きることがありません。そしてこの作品は、戦国時代に生きた人々の波乱万丈な人生を知る上で貴重な書となっています。

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