国選弁護制度

国選弁護制度について

国選弁護制度は、刑事手続において経済的な理由により私選弁護人を選任できない被疑者や被告人に対して、国が費用を負担し、裁判所が弁護人を指名する制度です。この制度は、被疑者国選弁護及び被告人国選弁護の2つの側面を持っています。国選で選任された弁護人は「国選弁護人」と呼ばれます。

憲法との関連

日本国憲法の第37条3項は、「刑事被告人は、いかなる場合でも資格のある弁護人を依頼できる。自ら依頼できないときは国が附する」と設定しています。この規定によって、被告人の国選弁護は憲法上保障された権利となります。それに対し、被疑者の国選弁護については、憲法第34条に基づく被抑留者や被拘禁者の弁護人依頼権の一環として認識されています。

被疑者国選弁護の概要

被疑者に対し、勾留状が発せられ、経済的理由から私選弁護人を選任できない場合は、裁判官に国選弁護人の選任を請求できます。この制度は2004年の刑事訴訟法改正によって導入され、2006年に施行されました。対象は身体拘束を受けている被疑者に限られ、逮捕による留置状態の被疑者は対象外です。2018年以降、すべての犯罪が対象になりました。国選弁護人の選任には資力申告書の提出が必要で、基準額を超える場合は私選弁護人を選任する必要があります。

被告人国選弁護の詳細

被告人も同様に、私選弁護人を選任できないとき、裁判所に国選弁護人の選任を請求できます。必要的弁護事件と任意的弁護事件では手続きが異なります。必要的弁護事件とは、死刑や無期懲役、懲役・禁錮が3年を超える事件などで、弁護人がいなければ裁判を開廷できません。この場合、私選弁護人が選任されていない限り裁判所は国選弁護人を選任する必要があります。

任意的弁護事件

任意的弁護事件の場合、被告人は資力申告書を提出し、基準額に達しない場合は国選弁護人を請求できます。しかし基準額以上の場合は、私選弁護人選任手続を経る必要があります。また、特に保護を要する被告人に対しては、裁判所が職権で国選弁護人を選任できます。

少年保護手続および被害者参加制度

少年の保護手続においても、一定の条件下で国選付添人が指定されます。更に、被害者参加制度を利用する被害者参加人にも、資力基準を満たさない場合に国選で弁護を受けられる制度があります。

法テラスの重要な役割

国選弁護制度の運営において、司法支援センター（法テラス）は重要な役割を果たします。裁判所が国選弁護人を必要とする場合、法テラスが候補の弁護士を指名し、その後契約に基づいて事務を取り扱うこととなります。また、報酬の決定や支給手続も法テラスが管理し、報酬基準に基づき決定されます。

報酬と費用の負担

国選弁護人の報酬は刑事訴訟の訴訟費用に含まれ、有罪判決があればその一部または全部が被告人の負担となります。ただし、資力がない場合はこの負担を免れられる制度も存在します。被害者参加人に対する国選弁護制度では、参加人は原則として費用を負担しません。

現在の課題

国選弁護人への報酬が低すぎるとの指摘が多く、これが弁護士の活動意欲の低下を招いています。国選弁護人は私選弁護人と同様の負担があるにも関わらず、報酬額は低く抑えられています。このため、経験豊富な弁護士が国選弁護人を避ける事例も見られます。低報酬は国選弁護人への偏見を助長し、弁護の質にも影響を及ぼす懸念があります。

国選弁護制度は、誰もが適切な弁護を受ける権利を実現するために重要な制度であり、持続可能な運営と報酬の見直しが求められています。

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