国鉄キハ60系気動車

キハ60系気動車について

キハ60系気動車は、日本国有鉄道（国鉄）によって1960年に製造された高出力のディーゼルエンジンを搭載した試作型気動車です。その主な目的は急行列車の運行をサポートするためでした。この車両は、キハ55系を基に、300 PS の出力を誇るエンジンを搭載し、液体変速機や新しい台車・車体設計など多くの革新が施されています。しかしながら、このモデルは量産には至らず、機関交換後にはキハ55系として運用されることになりました。

開発の背景

キハ60系の開発は、従来の国鉄気動車で使用されていたおよそ150から180 PSの出力を持つDMH17系エンジンの能力不足を解消するために始まりました。また、海外では高出力エンジンを一基搭載する動車の成功事例もあり、これが開発に影響を与えました。

DMH17系エンジンについて

DMH17系エンジンは、国鉄の気動車用標準ディーゼルエンジンの一つです。このエンジンは17リットルの排気量を持ち、並列8気筒の自然吸気型であり、当時の日本の技術力が結集されていました。1951年から1955年にかけて量産が始まり、その安定性から多くの国鉄気動車に使用されました。しかし出力が低いという課題も早い段階から顕在化しました。

DMH17系エンジンの問題点

DMH17系エンジンの出力不足は特に急勾配のある路線では顕著で、蒸気機関車に比べて登坂能力に劣ることがありました。このため、エンジンを二基搭載する2エンジン車両が開発され、キハ44600形がその一例です。その後、改良型のキハ44700形も登場し、性能の向上が見込まれました。

DMF31系エンジンの活用

国鉄は、新しいエンジンとしてDMF31系を開発しました。このエンジンは1930年代に設計され、240 PSの出力を持つものでしたが、初期の試作車では故障が頻発しました。しかし、戦後にはエンジンの再設計が行われ、改良されたエンジンがDD13形機関車などに採用され、成功を収めました。

キハ60系は、この改良されたDMF31HSA形エンジンを搭載して試作されましたが、エンジンの潤滑性能の不足や変速機の動作不良が性能に影響を及ぼしました。

キハ60系気動車の特徴

キハ60系は、当時の新技術を取り入れた気動車であり、その最高速度は110 km/hが計画されていました。これは在来の気動車の最高速度を大きく上回るもので、国鉄最速の151系電車と肩を並べるものでした。

車体デザイン

車体デザインは、キハ55系に似ているものの、外吊り式の客用扉が特徴です。エンジンの配置に伴い、床下の構造も工夫されており、防振防音対策が施されています。

主要機器

また、エンジンはDMF31エンジンを基にしており、直結段が2段に増加された新しい液体変速機が搭載されました。騒音対策として、エンジンカバーには吸音材が使われており、大型の消音器も装備されています。

最終的な運命

キハ60系は、試運転後まもなく不具合が多発し、最終的には通常のDMH系エンジンに換装されることとなりました。結局、1968年まで運用されるも、廃車にされた中で保存された車両は一切ありませんでした。ただし、ディスクブレーキ装備の台車は後のキハ80系に採用されるなど、技術的な進歩には寄与しました。

キハ60系気動車は試作で止まったものの、その技術やデザインは後の時代に影響を与える結果となりました。

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