国鉄9700形蒸気機関車

9700形蒸気機関車について

9700形は、日本の鉄道史において重要な役割を果たしたテンダー式蒸気機関車であり、かつて日本国有鉄道（国鉄）の前身である鉄道院に在籍していました。この機関車は1897年に、アメリカのボールドウィン社から輸入されたもので、海岸線沿いの石炭輸送に特化したデザインが施されています。当時の日本では、最大かつ最強の機関車とされ、その構造により貨物輸送の効率を劇的に向上させました。

概要と歴史

9700形は日本鉄道によって、常磐線沿線から生産された石炭を運ぶために20両が輸入されました。製造番号は15203から15222にかけて付与され、その形式は日本鉄道ではBt4/6形（530 - 549）と呼ばれていました。国有化後の1909年には、鉄道院の車両形式称号規程に基づいて「9700形」と命名され、9700から9719の番号が割り当てられました。特に、ウッテン火室に改造された5両（9715 - 9719）は、独自の特性を持つ機関車として知られています。

構造と特性

9700形の最も目を引く特徴は、2-8-2（1D1）という車軸配置です。この配置は、粗悪な質の石炭を燃料として利用するために大きな火床面積を必要とし、そのために特有の構造が採用されました。特に、火室を台枠の上に載せる形体が採用されており、これにより発生する蒸気量を効率良く利用することが可能でした。また、後に5両がウッテン火室に改造され、その結果カマボコ形の火室が形成されました。

2-8-2型の機関車は、1880年代からすでにアメリカで存在しており、その愛称として「ミカド」という名称がボールドウィン社によって人気を博しました。この名称は日本に由来しており、製造された機関車の中でも特異な存在とされたのです。ボールドウィン社はこの形式の機関車を広く宣伝し、1905年以降、多くの鉄道がこの配置を導入するようになりました。

技術的詳細

9700形のボイラーはストレートトップ形で、砂箱は第1缶胴の上に配置されています。安全弁はポップ式で、煙管蒸発伝熱面積が197.8平方メートルと高い性能を誇ります。元々は緑色に塗られていたこの機関車は、後に全体が黒色へと塗り替えられました。運転台の側面や炭水車には、当初は黄色のラインが施されており、さらに装飾模様が加えられていましたが、次第にこれらは削減されていきました。

最後の運命

9700形は国有化後、東部鉄道管理局配属となり、仙台鉄道管理局で運用されました。しかし、1922年には全車が廃車となり、民間に払下げられた記録や保存された例はありません。日本国内では特に目立った存在ではなく、当時の鉄道管理局自身も簡易な呼称で記載していたため、あまり知られることはありませんでした。9700形は日本国内での評価は低かったものの、ボールドウィン社によって国外では広く知られ、多くの支持を集めました。生涯を全うした9700形は、今も多くの鉄道ファンに愛されています。

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