国際ウイルス分類委員会

国際ウイルス分類委員会(ICTV)とは



国際ウイルス分類委員会(ICTV: International Committee on Taxonomy of Viruses)は、ウイルスの分類と命名に関する国際的な基準を定める組織です。ICTVは、ウイルスの普遍的な分類体系を開発し、生物に影響を与えるすべてのウイルスを記述、命名、分類することを目的としています。この組織は、ウイルス学の専門家で構成されており、国際微生物学連合(IUMS)のウイルス学部門によって管理されています。

ICTVの活動は、以下の目標を掲げています。

国際的に合意されたウイルスの分類法を開発すること
国際的に合意されたウイルスの分類群の学名を制定すること
ウイルスの分類と命名法に関する決定をウイルス学者に伝達するための会議を開催し、報告書を公表すること
合意されたウイルスの分類群の学名の公式な索引を維持すること
現代社会におけるウイルスによる影響とその行動を研究すること

ICTVの命名法の原則



ICTVは、ウイルスの命名法において、以下の原則を重視しています。

安定性: 誤解や混乱を招く可能性のある学名の使用を避け、不要な学名の作成を控えること。
標準的な分類体系にわずかに修正を加えた普遍的なウイルス分類体系を使用。タクソン(分類群)、目、科、亜科、属、種のみを認識。

ICTVは、1962年の設立以来、命名法の安定性を維持することに成功しています。例えば、1980年代に認識されたすべての属と科は、現在も引き続き使用されています。

分類群の命名と変更



新しい学名の作成、学名の変更、分類群の創設、分類の確定の提案は、ICTVの実行委員会で議論されます。決定に先立ち、関連するICTV小委員会と研究グループとの協議が行われます。分類群の名称は、ICTVによって承認されるまで公式な地位を与えられず、既に承認された階級の分類群と関連性がある場合にのみ名称が承認されます。適切な名称の提案がない場合、正式な学名が決定するまで、分類群は一時的に承認されることがあります。

分類群のルール



ICTVは、各分類群に対して以下の命名規則を設けています。

種: 種名は、ホスト名とウイルスという単語だけで構成されてはならず、種の識別が可能なものにする。数字や文字の組み合わせを添え名として使用できるが、新規に作成されたシリアル番号は単独で許容されない。
属: 属名は、接尾辞が「-virus」で終わる1語とする。新しい属の承認には、タイプ種の承認が伴う。
亜科: 亜科名は、接尾辞が「-virinae」で終わる1語とする。
科: 科名は、接尾辞が「-viridae」で終わる1語とする。
目: 目名は、接尾辞が「-virales」で終わる1語とする。

Sub-viral agents に関する命名規則



ウイルスの分類に関連する命名規則は、ウイロイドにも適用されます。ウイロイドの分類群の公式の学名の語末は、種名にはウイロイド名を付け、属名の接尾辞を「-viroid」とし、亜科名の接尾辞を「-viroinae」とし、科名の接尾辞を「-viroidae」とします。

レトロトランスポゾンには、ウイルスの分類および命名規則が適用されます。サテライトウイルスプリオンウイルスとして分類されませんが、関連分野の研究者にとって有益なように分類されることがあります。

表記規則



公式の分類学の表記規則では、ウイルスの目、科、亜科、および属の承認された学名イタリック体で表記され、名前の最初の文字を大文字で表します。種名もイタリック体で表記され、最初の単語の最初の文字を大文字で表します。固有名詞や固有名詞の一部でない限り、他の単語は大文字を使用しません。

メタゲノミクスによって発見されたウイルスの分類



ICTVは、メタゲノムデータから組み立てられたゲノムが実際のウイルスを表していることを認識しています。メタゲノミクスの重要性を認めつつ、古典的なウイルス学的アプローチによるウイルスの分離と特性解析も推奨しています。

ICTVの報告書



ICTVは、1971年以来、定期的にウイルス分類学の報告書を発行しています。第9回ICTV報告書は2011年12月に発行され、内容はICTVのウェブサイトで公開されています。2017年からは、第10回ICTV報告書がオンラインで公開され、学名として審査を受け承認された内容が逐次更新されています。

ICTVdbのデータベース



ICTVdbは、ICTVの分類学データベースとして開発された種と分離株のデータベースです。このデータベースは、ウイルスの化学特性、ゲノムタイプ、複製、疾患、ベクター、地理的分布などの要因に基づいてウイルスを分類します。ICTVdbは、オーストラリア国立大学で開発されましたが、2011年にプロジェクトが中断されました。しかし、ICTVは、個々のウイルスの主要なメタデータの保存先として、ICTVデータベースを公開データベースに置き換え、ICTV報告書の要約をそのデータベースに公開しています。

ICTVは、ウイルスの分類と命名に関する国際的な基準を定める上で、非常に重要な役割を果たしています。この組織の活動は、ウイルス学の研究進歩に不可欠なものであり、世界中の科学者に利用されています。

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