国際化学物質安全性カード

国際化学物質安全性カード（ICSC）

国際化学物質安全性カード（International Chemical Safety Card、略称ICSC）は、化学物質の健康や安全に関する情報を整理した文書であり、特に化学物質を扱う労働者達を対象として作成されています。このカードは、国際化学物質安全性計画（IPCS）の取り組みの一環として開発され、欧州委員会及び各国の協力を得て発表されています。ICSCは、化学物質安全データシートを補完するものであり、専門家ではなく生産現場の従業員に向けて設計されています。

概要と特徴

ICSCは、標準化されたフォーマットで提供され、異なる言語間での翻訳が容易です。2023年10月時点で、カードは16言語でHTMLまたはPDF形式で入手可能で、さらに紙媒体版も存在します。英語版では2009年時点で1,646枚のカードが発行されており、これらのカードは国際的な化学者によって作成・査読されています。ただし、各国の法律に適合したものではなく、法的な拘束力はありません。

歴史的背景

1972年、国際連合人間環境会議がストックホルムで開催され、人間環境宣言と環境国際行動計画が採択されました。これを受けて、国際連合環境計画（UNEP）が設立され、WHOは化学物質と健康への影響に関する資料を発表しましたが、効果は限定的でした。このような経緯から、1978年にWHO、UNEP、ILOの協力によって国際化学物質安全性計画が立ち上げられ、1980年から活動を開始しました。この計画の目的は、化学物質の人体や環境への影響に関するデータの収集と評価、さらに安全性評価の手法の確立と改善を行い、国際的な協力による被害の防止を目指すことです。その中で、1984年にICSCが開発されました。

1990年にはILO第77回理事会で、化学製品に関する第170号条約と第177号勧告が採択され、ICSCはこの条約に基づいて、危険な化学物質の特性、供給者、分類、安全措置などの重要な情報を提供することが義務付けられました。

日本におけるICSCの展開

日本語版のICSCは、国立医薬品食品衛生研究所（NIHS）が翻訳・公開しており、1992年には厚生省の監修の下で書籍版が発行されました。1998年以降、NIHSはオンラインで日本語版に関するページを開設し、2010年11月時点で1676枚のカードがウェブ版として利用可能です。以前は書籍版も存在しましたが、1999年以降は新たな版は発行されていません。

まとめ

国際化学物質安全性カードは、化学物質に関連する労働者が持つべき基本的な安全に関する情報を提供する重要なツールであり、その正確な情報は職場の安全管理に役立っています。ICSCの情報は、国際的な協力を通じて継続的に更新され、化学物質の安全な取り扱いが促進されています。

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