国際天文学連合による惑星の定義

国際天文学連合による惑星の定義

2006年、[国際天文学連合]は、太陽系における惑星の定義を公式に定めました。この定義は、長年の議論の末に合意されたもので、天体を惑星、準惑星、太陽系小天体の3つに分類します。この定義は、特に冥王星の分類変更を巡って大きな議論を呼びましたが、現在でも天文学における公式な基準として用いられています。

惑星の定義

IAUの定義によると、惑星とは以下の3つの条件をすべて満たす天体です。

1. 太陽の周りの軌道上にあること: 惑星は、恒星（この場合は太陽）の周りを公転している必要があります。
2. 静水圧平衡にあると推定されるのに十分な質量を持つこと: 簡単に言うと、自己重力によってほぼ球形になっている必要があります。この条件を満たすためには、ある程度の質量が必要です。
3. その軌道近くから他の天体を排除していること: 惑星は、自身の重力によって軌道周辺の天体を吸収するか、弾き飛ばす必要があります。これにより、惑星の軌道は比較的クリアな状態になります。

準惑星と太陽系小天体

上記の3つの条件のうち、最初の2つを満たす天体は「準惑星」と定義されます。準惑星は、球形に近い形状を持つものの、軌道周辺の天体を排除するほどの重力を持っていない天体です。

一方、3つの条件のうち最初の1つのみを満たす天体は「太陽系小天体」と呼ばれます。これらの天体は、不規則な形状で、多くは小惑星や彗星などが含まれます。

IAUは、惑星と準惑星を明確に区別された2つのカテゴリーとしています。当初は準惑星を惑星のサブカテゴリーに含める案もありましたが、将来的に多くの天体が準惑星に分類される可能性があったため、この案は最終的に却下されました。

定義策定の背景

21世紀初頭まで、惑星の公式な定義は存在しませんでした。1930年に冥王星が発見され、太陽系には9つの惑星が存在すると考えられていましたが、1978年の冥王星の衛星カロンの発見により、冥王星のサイズが従来の想定よりもはるかに小さいことが判明しました。さらに1990年代以降、冥王星と同程度の大きさの天体が多数発見されるようになったことで、惑星の定義を改めて見直す必要性が生じました。

2000年頃からは、クワオアー、セドナ、エリスなど、冥王星と同等かそれ以上の大きさを持つ天体が次々と発見されました。これらの天体をすべて惑星として扱うと、惑星の数が際限なく増えてしまうため、天文学者たちは惑星の定義を再検討する必要性に迫られました。

このような背景から、IAUは惑星の定義を正式に定めるための委員会を設置し、議論を重ねた結果、2006年に現在の定義が採択されました。

定義策定の過程

IAUの委員会は、さまざまな定義案を検討しました。初期の案では、文化的定義、構造的定義、動力学的定義の3つが提案されました。

文化的定義: 人々が惑星と呼ぶものが惑星であるという、最も単純な考え方です。しかし、科学的な厳密さを欠くため、採用されませんでした。
構造的定義: 天体が球形を保てるほど大きいものを惑星とする定義です。この定義は、天体の物理的な性質に基づいていますが、曖昧さが残るため採用されませんでした。
動力学的定義: 天体が自身の重力で軌道上の他の天体を排除できるほど大きいものを惑星とする定義です。この定義は、天体の軌道力学的な特徴に基づいており、最終的にこの考え方が採用されました。

最終的な定義は、この動力学的定義を基本とし、天体が太陽の周りを公転していること、球形に近い形状を持っていること、そして軌道周辺の天体を排除していることという3つの条件を満たす必要があるとされました。この定義により、冥王星は惑星ではなく、準惑星として再分類されることになりました。

議論と批判

新しい定義は、多くの天文学者から支持された一方で、多くの批判も受けました。特に、以下のような点が問題視されました。

定義の曖昧さ: 惑星の軌道周辺から他の天体を「排除」するという定義が曖昧であるという批判がありました。地球や木星も、軌道上に小惑星やその他の天体が存在するため、この条件を完全に満たしているとは言えません。
太陽系外への適用: この定義は、太陽系外の惑星（系外惑星）には直接適用できないという問題点がありました。太陽系外の天体を惑星と考えるのに必要な最低限の質量及び大きさは、太陽系で使われるものと同じ値とするべきであるという主張がありましたが、定義自体は明確に太陽系内に限定されていました。
二重[[惑星]]の定義: 冥王星とカロンのように、連星系のように互いに公転する天体を二重[[惑星]]とする定義についても、議論がありました。しかし、共通重心がより重い天体の内側にある場合は、衛星とみなされるため、二重[[惑星]]の定義は複雑なものとなりました。
少数の投票者: 最終的な定義は、IAU総会で投票によって決定されましたが、投票に参加したのは全会員のわずか一部であり、この過程の妥当性も疑問視されました。

定義の変更による影響

IAUによる惑星の定義の変更は、天文学界だけでなく、一般社会にも大きな影響を与えました。特に、冥王星が惑星から準惑星に格下げされたことは、多くの人々に衝撃を与え、議論を呼びました。

教育分野: 教科書や百科事典など、教育関係の書籍の記述を書き換える必要が生じました。これにより、子供たちが惑星について学ぶ内容も大きく変わることになりました。
占星術: 占星術の世界では、惑星の定義変更が従来の慣習に影響を与え、議論を巻き起こしました。
文化的影響: 冥王星の降格は、音楽や文学など、さまざまな芸術分野にも影響を与え、新たな創作活動のきっかけとなりました。

その後の展開

2008年には、準惑星の中でも、特に太陽系外縁天体の軌道を持つものを「冥王星型天体 (plutoid)」と定義しました。冥王星、ハウメア、マケマケ、エリスなどが、このサブカテゴリーに属します。

IAUによる惑星の定義は、天文学の進歩とともに変化しうるものであり、今後も新たな発見によって、定義が見直される可能性も残されています。

まとめ

国際天文学連合が定めた惑星の定義は、太陽系の天体を明確に分類するための重要な基準です。この定義は、惑星、準惑星、太陽系小天体の3つのカテゴリーを設け、特に冥王星の分類変更を巡って大きな議論を呼びました。定義策定の背景には、天文学的な発見や技術の進歩があり、この定義は今後も天文学の進歩とともに、進化し続けると考えられます。

この定義は、太陽系内の天体に適用されるものであり、太陽系外の惑星（系外惑星）については、別の定義が用いられています。天文学の世界では、新しい発見や技術の進歩によって、常に新しい知識が更新されており、惑星の定義もその例外ではありません。

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