国際文民事務所

国際文民事務所（ICO）とは

国際文民事務所（International Civilian Office、ICO）は、コソボ政府による施政を監督する国際機関です。コソボの地位問題を仲介したアハティサーリ国連特使が提示した、セルビアからの国際的監督下での独立を認める「アハティサーリ案」に基づいて設立されました。

アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどの連絡調整グループ（CG）諸国は、アハティサーリ案に基づくコソボ独立を支持し、独立後には国際連合コソボ暫定行政ミッション（UNMIK）から権限を移譲される形で、ICOがコソボを監督することとなりました。同様の機関として、ボスニア・ヘルツェゴビナを監督する上級代表事務所（OHR）があります。

国際運営グループ（ISG）

国際運営グループ（International Steering Group、ISG）は、コソボ独立を推進する国々で構成されています。ICOによるコソボ監督の基本方針を決定し、国際文民代表を任免する役割を担います。これは、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける和平履行評議会（PIC）に相当します。

国際文民代表（ICR）

国際文民事務所の長は、国際文民代表（International Civilian Representative、ICR）です。国際文民代表は、EUの特別代表（欧州連合特別代表（EUSR））も兼務し、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける上級代表（HR）に相当する役割を果たします。

現在の国際文民代表は、ピエター・フェイス（Pieter Cornelis Feith）です。

組織

ICOには、アメリカ、EU加盟国、スイス出身者を含む約89名の職員が勤務しています。組織は以下の通りです。

Front Office
政策課（Policy Unit）
保安助言課（Security Advisory Unit）
社会課（Community Affairs Unit）
経済・財政課（Economic & Fiscal Affairs Unit）
法制課（Legal Unit）
報道・広報課（Press & Public Affairs Unit）
官房係（Administration Section）
保安課（Security Unit）
ミトロヴィツァ事務所（Mitrovica Office）

最終的には約300名体制となる予定でした。

権限

国際文民代表は、アハティサーリ案を実施する目的の範囲内で、コソボ政府に対する内政介入権を持ちます。この権限は、コソボ憲法にも明記されています。

コソボに展開する国際機関のうち、NATO主体のKFORは軍事面を、EUのEULEXコソボは司法警察面を担当しますが、国際文民代表にはこれらの組織に対する直接の指揮命令権はありません。ただし、国際文民代表はEUSRの資格において、EULEXコソボと業務を調整します。

問題点

当初、アメリカ、イギリス、フランスなどは、ICOを国連安保理決議第1244号にいう「国際文民プレゼンス」と位置づけ、設立とUNMIKからの権限委譲について国連安全保障理事会の承認を得ようとしました。しかし、コソボ独立に反対するロシアが承認を与える可能性はなく、セルビアやロシアはICOに法的根拠がないとして設立に反対しました。

関連項目

コソボ地位問題
コソボ紛争

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