国際無線障害特別委員会

国際無線障害特別委員会（CISPR）の概要

国際無線障害特別委員会（CISPR: Comité international spécial des perturbations radioélectriques）は、電気・電子機器から発生する電磁波障害（EMI）に関する国際規格を策定する組織です。1934年に国際電気標準会議（IEC）の特別委員会として設立され、世界中の電磁環境の改善に貢献しています。

CISPRの主要な目的は、電磁波障害の測定方法、許容値、そして機器の電磁両立性（EMC）に関する国際的な統一規格を策定することです。これにより、無線通信や電子機器の相互干渉を防止し、安定した電波環境を維持することを目指しています。

CISPRの組織

CISPRは運営委員会と、専門分野ごとに分かれた複数の小委員会（Sub Committee: SC）によって構成されています。これらの小委員会は、それぞれの専門分野における規格の策定や改定、そして最新の技術動向の反映などを行っています。小委員会は、専門家集団によって構成されており、各国の代表者や専門家が参加して議論や合意形成が行われています。組織構造は、効率的な規格策定と国際的な連携を促進するよう設計されています。

2001年以前は、電力線（SC-C）、放送受信機（SC-E）、情報技術装置（SC-G）などを担当する小委員会が存在していましたが、これらの小委員会は統合され、現在は以下の6つの小委員会が活動しています。

SC-A: 無線妨害測定と統計的手法
SC-B: 工業・科学・医療（ISM）向け高周波装置、高電圧設備、電力系列、電気鉄道における妨害
SC-D: 自動車（ガソリン車、電気車）、内燃機関における妨害、車載受信機
SC-F: モーター、電動工具、照明器具などからの妨害、イミュニティ
SC-H: 無線通信保護のための妨害波制限
SC-I: 情報技術（IT）設備（コンピュータなど）、マルチメディア/ハイファイ機器、受信機の電磁環境適合性

CISPR規格

CISPRは、電磁妨害の測定方法や許容値に関する様々な規格を発行しています。これらの規格は、ケーブルの長さ、測定装置の構成、アースの方法など、測定の精度を確保するための詳細な手順を規定しています。さらに、機器のイミュニティ（耐妨害性）に関する規定も含まれています。これまでに30以上の規格が発行されており、電子機器メーカーにとって重要な設計基準となっています。

代表的なCISPR規格には以下のようなものがあります。

CISPR 10: CISPRの組織、規則、および手順
CISPR 11: 工業、科学、医療（ISM）向け高周波機器の電磁妨害特性の許容値及び測定方法
CISPR 12: 車両、モータボート、及び火花点火エンジン駆動の装置からの妨害波の許容値及び測定方法
CISPR 14: 電磁環境適合性。電動工具、電気・電子機器、および同様の装置。（エミッションとイミュニティ）
CISPR 22: 情報技術設備の無線妨害特性許容値及び測定方法
CISPR 25: 車載受信機の保護のための妨害特性の許容値及び測定法

市場におけるCISPR規格の適用

CISPR規格は、電子機器メーカーにとって、製品開発における重要なベンチマークとなっています。CISPRは、規格の適用方法に関するガイドラインも公開しており、メーカーはこれらのガイドラインに従って製品開発を進めることができます。

例えば、CISPR 25は自動車用電子機器市場において広く利用されており、多くのメーカーが自社製品の設計においてこの規格を遵守しています。ある企業では、CISPR 25に適合するテールライトのリファレンスデザインを公開するなど、CISPR規格は製品開発を支援する役割も担っています。

まとめ

CISPRは、国際的な電磁環境の改善に大きく貢献している組織です。その規格は、世界中の電子機器メーカーにとって不可欠な存在であり、今後も電磁波障害対策技術の発展に重要な役割を果たしていくでしょう。

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