国際照明委員会

国際照明委員会（CIE: Commission internationale de l'éclairage）は、光、照明、色に関する国際的な標準化を推進する組織です。オーストリア・ウィーンに本部を置き、1913年に設立されました。CIEの前身は1900年設立の国際測光委員会であり、長い歴史を持つ権威ある機関と言えるでしょう。

CIEの活動は多岐に渡ります。光の物理測定、色の表現、照明設計、そして近年注目される光生物学や画像技術といった分野にまで及びます。これらの活動は、6つの活動部会とそれぞれの技術委員会によって支えられています。各部会は専門性を活かし、照明や色の国際標準規格の策定、改定、普及に携わっています。現在活動している部会は、視覚と色、光と放射の物理測定、屋内環境と照明設計、交通と屋外の照明、光生物学と光化学、画像技術の6つです。過去には、屋外照明や照明の一般的問題を扱う部会もありましたが、現在は統合・閉鎖されています。

CIEは、国際標準化機構（ISO）や国際電気標準会議（IEC）と緊密に連携しています。特別な協定により、CIEで策定された規格は、簡略化された手続きでISOやIEC規格として採用される仕組みが整えられています。そのため、CIEの規格は世界的に広く受け入れられ、様々な産業分野で活用されています。

CIEの大きな功績として、色空間の定義があげられます。1931年には、イギリス・ケンブリッジで開催された会議でRGB表色系とXYZ表色系を定めました。XYZ表色系は、現在も色空間を表すための国際標準として広く利用されており、様々な色空間の基礎となっています。この会議では、CIE標準光源A、B、Cも同時に定められました。

CIEは色に関する規格だけでなく、人間の視覚特性に関する標準も定めています。1924年には2度視野における明所視標準分光視感効率V(λ)を、1951年には暗所視標準分光視感効率V'(λ)を定めました。その後も、10度視野における明所視標準分光視感効率V₁₀(λ)や、CIE 1960色空間、CIE 1964色空間、CIELAB、CIELUVといった、様々な色空間や視覚特性に関する標準を次々と策定、改良してきました。1988年には、修正2度視野分光視感効率Vₘ(λ)を定め、より正確な視覚特性の表現を実現しました。これは、1924年に定められたV(λ)の改良版であり、複数の研究者による長年にわたる研究の成果です。

日本はCIEの設立当初から重要な役割を果たしており、1927年に日本照明委員会(JCIE)が参画しました。現在では、日本照明工業会(JLMA)のCIE国内委員会がその役割を引き継ぎ、国際的な標準化活動に貢献しています。

CIEは、4年に1度、欧米の主要都市で定期大会を開催することが通例ですが、1979年には日本で第19回大会が開催された実績があります。これは、日本の照明技術水準の高さと、国際的な照明コミュニティへの貢献が認められた証でしょう。

このように、CIEは光と色に関する国際的な標準化において中心的な役割を担い、世界の産業発展に大きく貢献しています。今後、ますます重要性を増す照明技術や色彩科学分野において、CIEの活動はますます注目を集めることでしょう。

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