国際藻類・菌類・植物命名規約

国際藻類・菌類・植物命名規約（ICN）は、生物学において重要な役割を果たしている国際的な規範です。これは、国際植物学会議の命名部会によって策定され、6年ごとに開催される会議で改正されます。この規約は、植物の学名を決定する唯一の国際基準となっており、動物名や原核生物名の命名規約と共に、生物の学名に関する基準となっています。

制定の背景

国際藻類・菌類・植物命名規約の制定にあたっては、スウェーデンの分類学者リンネが提唱した二名法が起源とされています。彼の著書『Species Plantarum』（1753年）は、植物命名法の起点として現在も認識されています。これに対し、動物の学名はリンネの『Systema Naturae』によって示されています。

最初の国際的な命名規約の試みは1864年のブリュッセルの会議にさかのぼります。この会議では、アルフォンス・ド・カンドルが命名規約の草案を作成し、1867年にはパリで「ド・カンドル法」として公開されましたが、実際に多くの国に受け入れられる形には至りませんでした。1905年のウィーンでの会議において、ほぼ全ての国が了承した国際植物命名規約が採択されました。この規約は、ド・カンドル法を基にしており、その後、アメリカ植物命名規約との対立がありましたが、1930年に統合され、国際的な合意が形成されました。

規約の改訂履歴

国際藻類・菌類・植物命名規約は、6年ごとの国際植物学会議において定期的に改訂されています。これまでの改訂は、19世紀後半から始まり、各会議において新たな規約が発表されてきました。特に近年では、メルボルン規約（2012年）や深圳規約（2018年）が発表され、重要な変更点が盛り込まれています。これには、電子媒体での発表の認可や、ラテン語の使用が必須でなくなるとの変更も含まれています。

重要な改訂内容

- ベルリン規約（1988年）: 植物命名規約の和訳が初めて発行されました。
- 東京規約（1994年）: 植物の「門」にも「phylum」の呼称が認可されるなどの変更がありました。
- セントルイス規約（2000年）: 化石植物に関する変更が行われ、学名の登録制度が白紙化されました。
- ウィーン規約（2006年）: 国際植物学会議が同じ都市で開催され、規約の名称が「ウィーン規約」とされました。
- メルボルン規約（2012年）: 電子ジャーナルでの発表を有効とし、ラテン語の使用が必須でなくなるなどの変更がありました。
- 深圳規約（2018年）: 菌類に関する規定が独立した章に分けられました。

規約改正の手順

この規約の改正は、国際植物学会議の命名法部会による決議案の採択を経て行われます。改正提案は誰でも可能ですが、正式な決議に至るには多くの支持が必要です。さらに、改正の結果は直ちに発効し、その後は正式に編集されて公刊されます。

先取権の原則とその例外

学名の有効性を確認するための先取権の原則が定められていますが、これが厳格すぎる場合には学名の安定性が損なわれる可能性があります。このため、植物命名規約ではあらかじめ保存名や廃棄名としてリスト化されることで、適切な学名の維持に努めています。

その他の命名規約との関連

動植物や原核生物それぞれに独立した命名規約が存在しますが、これらの違いを理解することが重要です。特に学名の使用においては、異なる規約の下では同名の学名が存在することもあります。このような状況下で、植物命名規約における用語の理解が不可欠となります。

国際藻類・菌類・植物命名規約は、植物、藻類、真菌の学名を定めるための国際的な基準であり、その改订によって常に更新されています。今後も植物分類学の発展に寄与し続けることでしょう。

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