国際連合安全保障理事会決議660

国際連合安全保障理事会決議660：イラクのクウェート侵攻と国際社会の対応

1990年8月2日、国際連合安全保障理事会は、イラクによるクウェート侵攻という前代未聞の事態に対処するため、決議660を全会一致で採択しました。この決議は、湾岸危機、そして続く湾岸戦争の端緒を開く、極めて重要な国際文書です。

決議660の背景: 1990年8月2日、イラク軍はクウェートに侵攻を開始しました。この侵略行為は、国際社会に衝撃を与え、国連安保理は緊急事態として事態の対応に迫られました。安保理は、この侵略が国際平和と安全に対する重大な脅威であると認識しました。

決議660の主要な内容: 決議660は、イラクによるクウェート侵攻を強く非難し、以下の点を明確に示しています。

侵略行為の非難: イラクによるクウェート侵攻は、国連憲章の原則に明白に違反する侵略行為として断罪されました。
即時無条件撤退の要求: イラクに対し、クウェートからの即時かつ無条件な撤退が要求されました。これは、いかなる条件も付けずに、ただちに撤退すべきであることを意味しています。
平和的解決への呼びかけ: イラクとクウェート両国に対し、事態の平和的解決に向けた真剣な協議の開始が要請されました。国連は、この努力を全面的に支援すると表明しました。
安保理の対応: 安保理は、必要に応じて、決議660の履行を確保するためのあらゆる手段を講じることを決定しました。これは、外交的圧力から軍事行動まで、幅広い選択肢を含んでいると解釈されました。

採択と影響: 決議660は、賛成14票、反対0票、棄権1票（イエメンは棄権し、その後退席）という圧倒的な支持で採択されました。この決議は、イラクの侵略行為に対する国際社会の強い非難と、クウェートの主権と領土保全を支持する姿勢を明確に示しました。

決議660は、湾岸戦争への道筋を定めた重要な第一歩でした。この決議に基づき、国際社会はイラクへの圧力を強め、経済制裁（決議661）などを科しました。最終的には、多国籍軍による軍事介入（決議678）へと発展し、湾岸戦争へと繋がっていきました。

関連する決議: 決議660は、湾岸危機と湾岸戦争における一連の国連安保理決議の最初の重要な決議です。これ以降、様々な決議が採択され、イラクへの対応、停戦後のイラクの再建、そしてイラクの大量破壊兵器問題など、多岐にわたる問題が議論され、対応が図られました。決議661（制裁）、決議678（武力行使の承認）、決議687（停戦）、など、一連の決議は、国際社会のイラク問題への対応の歴史を物語っています。

決議660の意義: 決議660は、国連憲章に基づく集団安全保障体制の有効性を示した重要な決議です。一方、武力行使という極めて重い手段に至るまでの過程、そしてその後のイラクへの影響など、様々な議論や反省材料も残しました。この決議は、国際法、国際関係、そして平和維持活動について、現在も重要な意味を持つ歴史的文書といえます。

もう一度検索