國保陽平

國保 陽平

1987年3月14日、岩手県盛岡市に生まれた國保陽平（こくぼ ようへい）は、元プロ野球選手であり、現在は高校の教員として、また野球部の指導者として活動している。右投げ右打ちの外野手としてプレーした後、指導者の道に進み、岩手県内の高校野球界でキャリアを重ねてきた。

岩手県立盛岡第一高校を卒業後、筑波大学体育専門学群で学んだ。大学時代の同級生には、後にプロ野球選手となる坪井俊樹がいた。大学卒業後、社会人クラブチーム「Tsukuba Club」でのプレーを経て、2010年にはアメリカへ渡る。アリゾナサマーリーグに参加した後、同年にはアメリカ独立リーグ、ゴールデンベースボールリーグに所属するティフアナ・シマロンズと契約を結び、プロ野球選手としての一歩を踏み出した。ティフアナでは25試合に出場し、59打数15安打、打率.254、2本塁打、7打点という成績を残したが、この年限りでチームを退団した。

選手としてのキャリアに区切りをつけた後、教育者となる道を選び、帰国後は岩手県立花巻農業高校に体育教師として赴任した。同校では野球部の監督を務め、指導者としてのキャリアをスタートさせた。2017年4月には岩手県立大船渡高校へ転任し、野球部の監督に就任した。大船渡高校監督時代の2019年夏、チームは大きな注目を集めることとなる。

2019年の第101回全国高校野球選手権岩手大会において、國保が指揮する大船渡高校は、当時高校最速となる163キロを計測し、将来のプロ入りが確実視されていたエース、佐々木朗希を擁し、優勝候補の一角と目されていた。チームは順調に勝ち進み、7月25日に行われた決勝戦に進出した。相手は花巻東高校だった。しかし、この試合で國保は、エースの佐々木朗希をマウンドに送らないという采配を選択した。結果、大船渡高校は2対12で敗れ、35年ぶりの甲子園出場は叶わなかった。

試合後、國保はこの采配について、佐々木朗希の将来を考慮し、「3年間で一番壊れる可能性があると思った」「故障を防ぐため。私が判断した」と説明した。この「登板回避」の判断は、瞬く間に大きな波紋を呼んだ。大船渡高校にはわずか2日間で250件もの苦情電話が殺到したほか、野球関係者や評論家の間でもその是非を巡る激しい議論が巻き起こり、メディアでも連日大きく報じられた。この出来事は、日本の高校野球界における投手の起用法、特に選手の健康管理と勝利至上主義の間でのバランスについて、社会的な議論を巻き起こす重要な契機となった。

2021年の夏の大会を最後に、國保は大船渡高校野球部監督を退任した。一度は指導の現場から離れたが、大船渡高校の教員を続けていたことから、2022年度には野球部の副部長として復帰し、その後部長に昇格している。

2023年4月からは、自身の母校である岩手県立盛岡第一高校へ転任し、野球部の副部長を務めた。しかし、2026年度より女子校であった盛岡白百合学園中学校・高等学校が男女共学化されるのに伴い、新たに男子硬式野球部が創設されることとなり、その初代監督に就任することが内定した。これに伴い、2025年3月限りで岩手県の公立高校教諭を退職し、2025年4月からは盛岡白百合学園中学校・高等学校に教諭として着任している。

大船渡高校監督時代の「登板回避問題」は、國保陽平の指導者としてのキャリアにおいて最も注目された出来事である。この采配は、選手の将来を守るという観点からの判断だったが、一部からは勝利を逃したことへの批判も上がった。後年、2022年5月にスポーツニッポンの記者から「もし、あの日に戻れるなら?」と問われた際、國保は迷うことなく「同じ決断を下します」と即答しており、自身の判断への強い意志を示している。この一件は、その後も高校野球における重要な議論の事例として、頻繁に引き合いに出されている。

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