國民の創生

『國民の創生』について

『國民の創生』（原題: The Birth of a Nation）は、D・W・グリフィスが監督した1915年の無声映画です。この作品は、アメリカ映画史において初めての長編映画として広く知られており、グリフィス自身が監督と脚本を担当しました。また、リリアン・ギッシュとヘンリー・B・ウォルソールが主演しており、これがアメリカの映画界に与えた影響は大きいです。

制作背景

本作はミューチュアル社のハリー・E・エイトキンとグリフィスが設立したエポック・プロデューシング・コーポレーションによって製作されました。原作はトーマス・ディクスンの小説『クランズマン』で、グリフィスとディクスン、フランク・ウッズの手で脚色がなされています。115分の上映時間を有し、製作費は約11万ドルに及び、その内訳でも特に大きな部分を占めていました。

あらすじ

物語は南北戦争時代を背景に、アメリカの北部・ペンシルベニア州のストーンマン家と南部・サウスカロライナ州のキャメロン家という2つの家族を中心に展開します。ストーンマン家のフィルとタッドは、キャメロン家のマーガレットやベンとともに友情を育みますが、戦争が二人の運命を大きく変えてしまいます。

スリリングな戦闘の中で多くの主人公たちが命を落とし、恋愛や悲劇的な運命が絡み合いながら物語は進行します。後半には、リーダーシップを発揮するKKKが描かれ、彼らの行動が崇高なものとして描写されるなど、作品の視点には多くの議論が呼ばれました。

映画技術の革新

本作は、映画技術においても多くの革新が見られます。たとえば、クロスカッティングや極端なクローズアップ、フラッシュバックなどの撮影技術が採用されており、ストーリー展開の緊張感や感情を引き出すための手法として利用されました。特に、複数の異なるショットを使用してシーンを構成する新たな編集方法は、今後の映画製作に大きな影響を与えました。

問題視された内容

『國民の創生』は公開当初から人種差別的な描写が問題視され、非難を浴びました。特にKKKが英雄的に描かれる後半は、多くの反発を招き、上映禁止運動が起こるなど社会的な問題になりました。そのため、この作品は映画史における重要な意義を有しながらも、同時に白人至上主義的なメッセージが垣間見える作品として議論の的ともなりました。

公開と影響

1915年にロサンゼルスで初めて公開され、翌月には改題され、ニューヨークで大ヒットを記録しました。44週間にわたり上映され、完成から2年間で2500万人以上が観たとされています。その興行収入は全世界で1000万ドルを超え、アメリカだけでも300万ドルの利益をあげました。

本作はホワイトハウスでも上映された初の映画であり、ウッドロウ・ウィルソン大統領も鑑賞したと言われています。しかし、その内容がもたらした社会的影響は今なお語り継がれており、映画史における高評価と同時に激しい批判の双方を受けている作品であると言えるでしょう。

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