圓通寺 (香川県宇多津町)

圓通寺：歴史と文化が息づく讃岐の古刹

香川県綾歌郡宇多津町に位置する圓通寺は、真言宗御室派に属する由緒ある寺院です。讃岐三十三観音霊場の第30番札所として、古くから多くの人々から信仰を集めてきました。

約700年の歴史：開創から現代まで

今から約700年前、宥弘法印によって開かれたと伝えられる圓通寺。本尊は聖如意輪観世音菩薩です。創建当時は観音山に七間四面の本堂が建立されていましたが、その後荒廃してしまいます。かつて本堂があった場所は現在も地名として「観音堂」として残っています。

延宝3年（1675年）、中興良意法印によって現在の地に再興されました。興味深いことに、現在の圓通寺は室町時代、三代将軍足利義満の官領であった細川頼之の居館跡だったとも伝えられています。さらに、細川頼之が阿波の秋月とともに四国の分国支配の拠点とした讃岐の守護所（館跡）であったという伝承も残されています。

貴重な文化財：県指定有形文化財

圓通寺には、県指定有形文化財に指定されている貴重な絵画が所蔵されています。それは、絹本墨画不動明王立像二童子像です。1969年（昭和44年）4月3日に指定され、その歴史的・芸術的価値は高く評価されています。

この作品には「妙沢（澤）老人筆施」と記されており、細川頼之と親交のあった龍湫周沢によって描かれたとされています。中央には剣と羂索を持つ不動明王、向かって右には矜羯羅童子、左には制吒迦童子が描かれており、三幅対の掛幅装となっています。南北朝時代の作と推定され、縦104.5センチメートル、横43.0センチメートルあります。県内では二童子像をともなった三幅対の妙沢不動は唯一のもので、極めて貴重です。

境内：歴史を感じさせる建造物と景観

圓通寺の境内には、歴史を感じさせる様々な建造物が残されています。1816年建立の本堂、1863年建立の大師堂をはじめ、庫裏、客殿、書院、山門などが静かに佇んでいます。また、高さ2.65メートルの花崗岩製の五輪塔も存在感を示しています。

かつて境内本堂正面には、県の天然記念物に指定されていた「圓通寺の松」がありました。樹高16メートル、根元の周囲25.5メートルという巨木で、細川頼之の手によって植えられたと伝えられ、「円通寺のマツ」として親しまれていましたが、現在は伐採されています。

まとめ：歴史と信仰の深淵に触れる

約700年の歴史を刻み、室町時代の歴史と深く関わってきた圓通寺。県指定文化財を含む貴重な文化遺産と、静寂に包まれた境内は、訪れる人々に歴史と信仰の深淵に触れる機会を与えてくれます。讃岐三十三観音霊場巡礼の際には、ぜひ足を運んでみてください。

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