地ネギ

地ネギ：小田原地方に伝わる伝統野菜

地ネギは、神奈川県小田原周辺地域で代々受け継がれてきた貴重なネギの品種です。別名「真ネギ」とも呼ばれ、その歴史は古く、明治時代から地元で自家栽培されていた夏ネギや分けつ性の草ネギを起源とするという説があります。しかしながら、その確かな起源については未だ解明されていません。

小田原地方のネギ栽培の歴史を紐解くと、興味深い地理的特徴が見えてきます。小田原以西では葉ネギが、一方、小田原以東では軟白ネギが主に栽培されてきたとされています。この地域差については、戦国時代の武将、北条早雲が持ち込んだという伝承も存在し、歴史と文化が深く関わり合ったネギの物語を垣間見ることができます。

地ネギは、分けつ性を持つ葉ネギの一種で、柔らかな葉が特徴です。特に、冬の寒さに当たると葉の先端が赤紫色に色づくことがあります。その風味は非常に優れており、薬味として、あるいは汁物の具材として最適です。独特の風味は、地元の料理に欠かせない存在となっています。

地ネギの栽培は、主に5月下旬から8月上旬にかけて種を播種します。収穫は7月中旬から10月中旬頃で、株の高さは40～50cmに達した頃が適期です。また、8月下旬から9月上旬にかけて移植を行い、軟白化させる方法も取られています。さらに、翌年の栽培のために、5月中下旬には種を自家採種する作業も行われます。

戦前より、小田原市の足柄地区、久野地区、そして南足柄市において地ネギは盛んに栽培されてきました。特に、近くの温泉地には薬味として多く出荷され、地元経済にも貢献していました。しかし、昭和20年代後半から昭和30年代にかけて九条ネギが普及し始めると、地ネギの生産量は次第に減少していきました。現在では、直売所での販売や自家消費が中心となっています。

かつては地域を代表する野菜として栄えた地ネギですが、時代の変化の中で生産量は減少しました。しかし、その独特の風味と歴史的背景は、人々の記憶にしっかりと刻まれています。現在でも、地元の生産者によって大切に育てられ、小田原地方の食文化を支える存在として、その地位を保ち続けています。伝統の味を守り続ける地ネギは、今後、新たな展開を迎える可能性も秘めています。地域の活性化やブランド化といった取り組みによって、再び脚光を浴びる日も近いのではないでしょうか。

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