坂上春子

坂上春子は、坂上田村麻呂の娘として生まれました。彼女は桓武天皇の妃となり、葛井親王と春日内親王をもうけました。戒名は慈心大姉と称します。

桓武天皇の崩御後、春子は摂津国住吉郡平野庄（現在の大阪市平野区）の領主であった兄弟の坂上広野を頼り、平野庄に移り住みました。この地で彼女は、坂上氏の尼寺である長寶寺（長宝寺）を開基しました。長寶寺は、以後坂上氏累代の尼寺として、その名を刻むことになります。

長寶寺の寺伝や系譜によれば、明治時代に至るまで、平野の坂上氏は長寶寺に隣接して屋敷を構えていたと伝えられています。このことからも、春子と坂上氏一族が長寶寺を拠点として、この地で深く根を下ろしていたことがうかがえます。

春子の墓は、現在も杭全神社に隣接する平野宮町の長寶寺の墓所に、坂上氏一族の墓と共にあります。彼女の存在は、長寶寺の歴史と、平野における坂上氏の足跡を今に伝える、重要な証となっています。

彼女は、一族の繁栄と信仰のために尽力し、その生涯を終えました。彼女の功績は、長寶寺という尼寺の存在を通して、後世にまで語り継がれています。坂上春子は、尼寺の開基という形で、平野の地に確かな足跡を残したのです。

春子の生涯は、桓武天皇の妃という華やかな側面と、尼寺の開基という信仰に生きた側面を持ち合わせていました。彼女の人生は、時代の変化の中で、一族の繁栄と心の平穏を願った女性の姿を象徴していると言えるでしょう。

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