坂上頼泰

坂上頼泰：戦国から安土桃山時代を駆け抜けた実業家と発明家

坂上頼泰（さかのうえ よりやす）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した、実業家として、そして発明家として名高い人物です。通称は木接太夫。その生涯は、武士としての道を歩みながらも、時代の変化に対応し、新たな道を切り開いていく波乱に満ちたものでした。

多田院警備と名家の末裔

頼泰は、源満仲が摂津国多田盆地を開拓した際に形成された武士団、坂上党の棟梁である坂上頼次の血筋を受け継いでいます。代々、多田院の警備を担う山本荘司家を34代として務めた名家出身です。多田院は当時の重要な拠点であり、その警備を担う責任は重大でした。頼泰の祖先は、西政所、南政所、東政所の三つの政所を統括し、多田院の安全を守り抜いてきました。

豊臣秀吉への仕えと隠退

足利義輝に仕えた時期もありましたが、多田院御家人の塩川国満との争いに巻き込まれ、坂上氏は衰微の一途を辿ります。その後、豊臣秀吉の親衛隊として仕えた時期を経て、頼泰は隠退。武士の道を離れ、町人として新たな人生を歩み始めました。山本膳太夫と名乗り、山本地区で庄屋として活躍。酒造業や銀鉱採掘、両替業など多様な事業を展開し、成功を収めました。

接ぎ木の技法と「木接太夫」の称号

隠退後の頼泰は、余暇を園芸に費やしました。そして、この園芸の活動の中で、彼は画期的な接ぎ木の技法を発明します。この技術は、当時の農業に革命的な変化をもたらす可能性を秘めていました。

文禄2年（1593年）、その噂を耳にした豊臣秀吉は、大坂城に頼泰を招き、自らその技術を目の当たりにしました。秀吉は、頼泰の技術の素晴らしさに驚き、感銘を受け、「木接太夫」の称号を与えました。これは、頼泰の技術と才能が、天下人である秀吉から認められた証です。

晩年と功績

慶長2年（1597年）、頼泰は生涯を終えました。しかし、彼の功績は後世に語り継がれ、明治45年/大正元年（1912年）には彰徳碑が建立されました。そして、2017年には宝塚市の特別名誉市民に選出され、その偉業は現代においても高く評価されています。

坂上頼泰の生涯は、武士としての誇りと、時代の変化に対応する柔軟性、そして優れた技術と才能を兼ね備えた人物像を示しています。多田院の警備、豊臣秀吉への仕え、実業家としての成功、そして接ぎ木の技法の発明、いずれもが彼の多才な一面を示しており、現代に生きる私たちに多くの示唆を与えてくれる存在と言えるでしょう。彼の名は、宝塚市の歴史、そして日本の歴史に深く刻まれています。

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