坂口祐三郎

仮面の忍者赤影の主演俳優、坂口祐三郎の生涯

坂口祐三郎（1941年9月3日 - 2003年7月13日）は、日本の俳優である。本名は中村徹。生い立ちから俳優としてのキャリア、そして晩年まで、数々の困難を乗り越えながら俳優として、そして一人の人間として生きた彼の生涯を紐解いていこう。

Fukuoka県久留米市に生まれた坂口は、複雑な家庭環境の中で育つ。父親に恵まれず、4歳の時に母親に捨てられ、祖父に育てられた。そんな厳しい環境の中で、彼は持ち前の明るさと才能を開花させていく。

転機は、高校2年生の時の出来事だった。本人の知らないうちに、同級生が応募した東映ニューフェイス第7期に合格する。面接では、高校生活との両立を訴え、周囲を驚かせながらも合格を勝ち取った。1961年、高校卒業後、東映第8期ニューフェイスとして入社。俳優座養成所で研鑽を積み、東映京都撮影所に配属される。

当初は端役や準主役を演じる日々が続いたが、1967年、関西テレビのカラーテレビ番組『仮面の忍者赤影』の主演に大抜擢される。この番組は空前の大ヒットとなり、坂口祐三郎の名を全国に知らしめた。しかし、その人気は同時に大きな重圧にもなった。赤影のイメージが強くなり、その後は新たな役への挑戦が難しくなったのだ。自らも「やくざ役」を避け、「赤影」へのこだわりを貫いた。収入面でも恵まれたとは言えず、華やかな表舞台とは異なる苦労があった。

『赤影』終了後も、彼は俳優として活動を続けた。芸名を「坂口徹」に改名し、様々な作品に出演するも、赤影のイメージを払拭することはできなかった。1974年には、女優の北条きく子と結婚するも、わずか1ヶ月で離婚という出来事も経験している。

俳優業が減少するにつれて、坂口は様々な仕事に就いた。京都で魚屋の店員や占い師を経験し、東京では雑誌ライターとして活躍するなど、多様な人生を歩んだ。東京スポーツ新聞では風俗関連の記事を連載し、人気を集めたというエピソードも残っている。映画業界でのコネクションを活用し、俳優への取材記事も執筆していた。

1989年、日光江戸村に勤務。講師や舞台演出に携わる傍ら、アトラクションにも参加し、「保安官レッドシャドウ」として活躍した。この経験から、後進の指導に魅力を感じ、故郷久留米市に戻り、俳優養成学校を設立。約10年間、俳優業と後進育成に尽力した。一時は「赤影」というイメージから逃れるために芸名を変更することもあったが、久留米に戻ってからは、「赤影から逃れられないのだったら、とことん赤影でやって行きたい」と語るようになった。

2003年7月12日夜、自宅で倒れ、脳幹出血のため死去。享年62歳だった。

坂口祐三郎は、少年時代から女性にモテ、中学・高校時代は弓道、剣道、バスケットボールに熱中した。東映入社後に習得した乗馬は特技だったが、水泳は苦手で『赤影』の泳ぐシーンは吹き替えだった。

『仮面の忍者赤影』での抜擢理由について、プロデューサーたちは坂口の「素晴らしく綺麗な目」が主題歌のイメージに合致したと語っている。劇中で使用された赤い仮面は坂口自身の手作りで、額の宝石は玩具の指輪を加工したものだった。赤影の髪型は赤熊の毛を使ったカツラで、撮影中の火炎放射器で焦げることも多かった。

『赤影』の赤い仮面のイメージが強すぎて、素顔で出演した際には「赤影はどこへ行ったの？」と問い合わせが殺到した。そのため、顔出しシーンは減少していった。撮影中は睡眠時間が少なく、ピアノ線で吊られたまま眠ったこともあったという。

坂口が使用していた赤い仮面は、生前、彼のマネージメントを務めた瀬崎智文に手渡され、『開運!なんでも鑑定団』で100万円と評価された。

共演者からは、危険な撮影にも耐え、決して泣き言を言わなかった姿が語られている。「題名は赤影・演技は白影・人気は青影」という言葉を残し、その言葉の意味を晩年になって理解したというエピソードも残されている。子供嫌いだったとされるが、共演者とは徐々に打ち解けていったという。

晩年は映画『新・赤影』の企画を構想していた。彼を抜擢した加藤哲夫プロデューサーは、坂口の死後「彼をもっとバックアップしてあげられなかったのが未だに無念」と悔やんでいる。

坂口祐三郎は、数々の映画、テレビドラマに出演した。代表作は『仮面の忍者赤影』だが、その他にも『新選組血風録』『水戸黄門』『暴れん坊将軍』など、幅広い作品に出演している。晩年は、自身の経験を生かし、後進の育成にも貢献した。彼の波乱に満ちた人生は、多くの人の記憶に刻まれている。

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