坂本藤良

坂本藤良 - 日本の経営学者

坂本藤良（さかもと ふじよし、1926年11月5日 - 1986年9月15日）は、日本の経営学の分野で重要な功績を残した学者であり、評論家としても知られています。彼の理論の背景には、ヒューマニズムが流れています。

生い立ちと学歴

坂本は東京市下谷区（現在の台東区）で生まれました。旧制成蹊高等学校の理科・文科を経て、1951年に東京大学経済学部を卒業しました。その後、彼は大学院で特別給付研究生として学び、正統派経営学の権威である馬場敬治教授の唯一の門下生となります。彼が経営学の手法を確立する過程で、1954年には『経営学における原価理論 - 序説1』を発表し、コスト論を展開しました。

経営学の布教と著作

1956年に特別給付研究生を修了した坂本は、1957年に慶應義塾大学商学部の設立に参加し、『経営通論』を担当しました。同年、体系的な原価理論を著した『近代経営と原価理論』を出版し、そこでは日本では当時まだ知られていなかった「スモッグ」という言葉を紹介し、公害についても扱っています。

1958年には『経営学入門』を出版し、これは広く読まれる一冊となりました。その結果、経営学ブームを引き起こし、坂本は「経営学の神様」と呼ばれるようになります。彼の著作は次々と出版され、ビジネス界においても権威を持つ存在となりました。

理論的貢献と実践的アプローチ

坂本はまた、学界と実業界をつなぐ重要な役割を果たしました。彼は複数の大学で教鞭を執りつつ、日本大学の顧問教授も務めましたが、徐々に学界から距離を置き、独立した経営学者として活動を開始しました。従来の理論に偏る学問ではなく、現実に基づいた経営理論の提示を重視し、日本企業の管理層への教育に力を注ぎました。

経済審議会の専門委員や、通産大臣の諮問機関である産業構造調査会の専門委員としても活動しました。さらに、テレビ番組『経営ゼミナール』や『現代の経営』のレギュラー解説者としても活躍し、様々なビジネスリーダーとの対談を通じて経営に関する知見を広めました。

挫折とその後

1969年、坂本は自身の家業である製薬会社の立て直しに挑むものの失敗し、世間から厳しい批判を受けました。この経験は後に『倒産学 - ゼロからの出発』に記され、彼は学者としての責任を強く感じるようになります。これ以降、彼は環境問題にも関心を持ち、翻訳や啓蒙活動を試みましたが、当時の社会は十分な関心を持っていなかったため、あまり広まりませんでした。

晩年と功績の再評価

1986年、坂本は59歳で肺がんを患いましたが、最期まで執筆活動を続け、『小栗上野介の生涯』を手掛けました。この著作は彼の絶筆となり、1987年に出版されると小栗の再評価が始まるきっかけとなりました。また、彼の残した経済に関する著作群は、日本の近代企業の管理や、株式会社の発生に関する貴重な資料として評価されています。

坂本は経済界や教育界で多くの役職を歴任し、彼の影響力は今日に至るまで続いています。彼の業績は、経営学の発展や環境問題への認識を高める一助となりました。

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