坂本金弥

坂本金弥の生涯と業績

坂本金弥（さかもと きんや）は、1865年に当時の備前国岡山城下で生を受けました。父は岡山藩士であり、坂本は長男として教育を受けました。明治維新を経て岡山商法講習所や大阪仏蘭西法律塾を経て、同志社英学校で新島襃に学びました。このようにして育まれた教育が後に彼の政治やビジネスに大きな影響を与えることになるのです。

坂本は、弁護士としてのキャリアをスタートしましたが、同時に経済活動にも関与するようになります。彼が特に注目を集めることになるのは、1891年に三菱合資会社から帯江鉱山を購入したことであり、この鉱山をわずか3400円で手に入れました。実際、これは三菱が数年前に購入した額のわずか20%にも満たない金額でした。この成功は彼の才能を示す初めの一歩となり、資金面ではほとんどを銀行からの借り入れに頼っていたと言われています。

鉱山経営に着手した坂本は、旧式の採掘方法に代わって最新の手法を導入し、管理を近代化することに努めました。これにより鉱山の採掘量は飛躍的に向上し、1909年には岡山県内で第2位、日本全国でも著名な銅山へと成長しました。ただし、急落した採掘量のために1910年代に入り経営は厳しくなり、最終的には藤田組に鉱山を売却し、鉱山経営からは撤退しました。

並行して、坂本は銀行業にも進出し、1896年に友人と御野銀行を設立しました。しかし、日清戦争後の金融不況により短期間で経営は行き詰まり、わずか5年で破産を余儀なくされました。また、玉島紡績所も買収しましたが、中国市場向けの輸出が不振で、こちらも失敗に終わりました。

坂本は政治活動にも積極的で、急進派として知られました。彼は1894年に中国進歩党を結成し、岡山県会議員に当選を果たします。その後、衆議院議員総選挙に立候補し、7期にわたって議員を務めました。特に、犬養毅とは親しい関係にあり、共に活動することが多かったですが、1913年に突然袂を分かつことになります。この決別が、坂本にとって大きな転機となり、彼の人気は急落しました。

坂本はまた新聞発行にも携わり、1889年に自由党の機関紙「岡山日報」を支援しましたが、他の様々な新聞も発行しました。1892年には日刊新聞「中国民報」を創刊しましたが、これは坂本の政治的意見を反映したものとなり、後に非常に競争の激しい言論合戦に巻き込まれました。特に、犬養との決別後、経営が悪化し、最終的に1913年に中国民報を大原孫三郎に売却しました。

坂本は政治活動の後、岡山市古京町に邸宅を構え、骨董品等の収集に情熱を注いでいましたが、1923年に58歳で亡くなりました。彼の死後、彼が遺した資産は競売にかけられ、その影響で岡山市は賑わったと伝えられています。特に、有名な長屋門は落札後、移築され、現在は東京都の文化財に指定されています。

坂本金弥とその影響力は、明治・大正の岡山において多岐にわたり、政治、経済、新聞業界においても重要な存在であり続けました。彼の生涯は、時代の変遷と共に多くの挑戦と成功を繰り返しながら、政治家としての志や実業家としての活動を織り交ぜたものでした。

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