坂根工博

坂根 工博（さかね のりひろ）氏は、日本の官界において建設・国土交通行政に深く関わり、その後、宮内庁において重要な職務を担っている人物です。

1961年（昭和36年）7月18日、大阪府大阪市に生まれた坂根氏は、地元の大阪府立大手前高等学校を卒業後、東京大学法学部へと進学し、1986年に同大学を卒業しました。同年、国家公務員採用Ⅰ種試験（法律）に合格し、建設省に入省。官僚としてのキャリアをスタートさせました。

建設省およびその後の国土交通省では、多岐にわたる部署で経験を積み重ねました。入省後、1993年には近畿地方建設局道路部路政課長として地方の現場を経験。翌1994年からは茨城県へ出向し、生活環境部国際交流課長、続いて企画部交通・産業立地課長を務め、地方行政の実際や国際交流、産業振興といった幅広い分野に携わりました。

本省に戻ってからは、1998年に建設省大臣官房人事課長補佐、1999年には建設経済局建設業課長補佐を歴任し、省内の組織運営や建設産業政策の企画・立案の基礎を築きました。2001年1月、中央省庁再編により国土交通省が発足すると、総合政策局建設業課長補佐に。同年7月からは総合政策局国土環境・調整課企画専門官、2003年からは同課環境調整官を務め、国土政策における環境問題や調整業務に深く関与しました。

その後も、国土交通省内で要職を歴任しました。2004年10月には住宅局総務課公営住宅管理対策官として住宅政策に携わり、2006年には土地・水資源局土地政策課土地市場企画室長として土地政策分野でも貢献しました。また、2007年1月からは宮内庁に出向し、東宮侍従を務めた経験も有しています。これは、彼のキャリアパスにおけるユニークな一時期と言えます。

国土交通省に戻った後も、大臣官房地方課長（2010年）、大臣官房調査官（2011年）などを務め、本省の中枢で重要な役割を果たしました。住宅局では住宅政策課長（2013年）、総務課長（2015年）と昇進し、再び住宅政策分野でリーダーシップを発揮しました。2016年6月には、異例ともいえる厚生労働省への出向を経験し、職業安定局雇用開発部長として雇用・労働政策にも関わりました。

2018年7月、国土交通省に戻り、大臣官房審議官（総合政策局、土地・建設産業局担当）に就任。省内の重要政策の審議に関わる立場となりました。そして、2019年7月9日には、国土交通省の根幹を担うポストの一つである国土政策局長に就任しました。

国土政策局長として、坂根氏は日本の将来を見据えた国土のあり方について深く考察しました。就任にあたっては、将来的な世界情勢を踏まえ、持続可能な国土の姿を改めて考えたいとの意向を示しました。また、国土政策の基本理念である「国土の均衡ある発展」に触れ、2050年という将来的な目標年に向け、「日本の新しい『国土の均衡ある発展』とは何かを探求していきたい」と、その定義と実現方法を模索する強い意思を表明しました。約一年間にわたり国土政策の推進を主導し、2020年7月21日に国土交通省を退官しました。

国土交通省退官後の2021年4月1日、坂根氏は再び宮内庁での職務に就き、侍従次長に任じられました。侍従次長は、天皇陛下や皇族方の日常を支える側近であり、宮内庁における重要な役職です。長年にわたり建設・国土交通行政で培った経験と調整能力を活かし、現在は皇室の活動を支える重責を担っています。

このように、坂根工博氏は建設省入省から国土交通省での多様なキャリアを経て、厚生労働省への出向、さらには二度にわたる宮内庁での勤務と、幅広い分野で要職を歴任し、日本の社会基盤整備や政策立案、そして皇室の活動支援といった多岐にわたる貢献を続けています。

もう一度検索