坂高麗左衛門

坂高麗左衛門

「坂高麗左衛門（さか こうらいざえもん）」は、山口県萩市に工房を構える萩焼の著名な窯元「坂窯」において、その当主が代々受け継いできた陶芸作家としての名跡です。萩焼の歴史の中で中心的な役割を果たしてきた坂窯は、その伝統技術と精神を現代にまで伝え続けており、現在の当主は十四代坂高麗左衛門氏です。

坂窯の始まりと御用窯としての歴史

坂窯の起源は、江戸時代初期の慶長年間（1596年-1615年）に遡ります。当時の領主であった毛利輝元公が、朝鮮から優れた陶工を招聘した際に、李敬（初代坂高麗左衛門）が兄の李勺光と共に萩の地に招かれ、萩焼の礎を築いたことに始まります。坂窯は、同じく萩焼の重鎮とされる三輪休雪の三輪窯と並び、江戸時代には萩藩の御用窯として厚い保護を受けました。これにより、藩への献上品の制作などを通じて、萩焼の技術と様式の本流を受け継ぎ、発展させていく重要な役割を担いました。

毛利氏が萩城下に居城を移したのに伴い、萩城下の松本村に窯を開設。その後、二代藩主である毛利綱広公から、李敬の子孫に対して「高麗左衛門」の名が下賜されました。以来、初代李敬より、坂窯の当主は代々「坂高麗左衛門」を名乗り、その伝統と技を受け継いでいくこととなります。

名跡の継承と近年の出来事

初代李敬から数え、坂高麗左衛門の名跡は途絶えることなく継承されてきました。特に、九代以降は「高麗左衛門」の襲名が定着し、近代以降も多くの優れた陶芸家を輩出しています。

近年、この由緒ある名跡を巡り、いくつかの出来事がありました。十二代坂高麗左衛門（達雄）氏は、東京芸術大学で日本画を修めた後、陶芸の世界へと転身し、独自の作風を確立しました。しかし、2004年7月、わずか54歳という若さで不慮の事故により急逝されました。この突然の訃報により、坂高麗左衛門の名跡は約7年間にわたり空位となりました。

2011年4月、十一代の四女にあたり、十二代の義妹にあたる純子氏が十三代坂高麗左衛門を襲名しました。これは、400年以上の歴史を持つ坂高麗左衛門の名跡において、女性が初めて襲名した画期的な出来事でした。しかし、十三代は襲名後わずか3年余りとなる2014年11月に病により惜しまれつつ没しました。

その後、十三代の長男である坂悠太氏が、2022年6月23日に十四代坂高麗左衛門を襲名し、現在に至ります。若い世代が名跡を継承したことで、坂窯および坂高麗左衛門の伝統が未来へと繋がれていくことが期待されています。

歴代の一部

初代：李敬 (1568-1643) - 萩焼創始者の一人
九代：道輔 (1849-1921) - 「高麗左衛門」号の定着
十二代：達雄 (1949-2004) - 事故により急逝
十三代：純子 (1952-2014) - 女性初の襲名者
* 十四代：悠太 (1988- ) - 現当主

坂高麗左衛門の名跡と坂窯の歴史は、萩焼の発展と深く結びついており、その作品は日本の陶芸史において重要な位置を占めています。

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