型枠支保工

建設工事において、構造部を形成するためにコンクリートを型枠に流し込む作業は極めて重要です。この際、まだ固まっていないコンクリートが型枠にかける圧力に耐え、正確な形状を保つためには、その型枠を強固に下から支える仮設の構造物が必要となります。これが「型枠支保工（かたわくしほこう）」です。

型枠支保工は、主に根太や大引、多数の支柱といった部材を組み立てて構成されます。コンクリートが十分な強度に達した後には撤去される一時的な設備です。労働安全衛生法では、「支柱や梁、つなぎ、筋かい等の部材で構成され、建設物の床や梁等のコンクリート打設に用いる型枠を支持するための仮設設備」と定義されています。

型枠支保工には、工事内容や要求される強度、現場の条件などに応じて多様な種類が存在します。代表的な方式を以下に示します。

パイプサポート式型枠支保工
現在最も広く普及している方式です。型枠となるせき板の下に根太（単管パイプ）、さらにその下に大引（端太角など）を配置し、これらを垂直な支柱であるパイプサポートで支持します。パイプサポートは30cm程度から390cmまで様々な長さがあり、必要に応じて2本まで継ぎ足して使用できます。支柱の高さ2m以内ごとに直角2方向へ水平材（つなぎ）を取り付けることで、一本あたりの許容荷重を2トンまで高めることが可能です。

軽量支保ばり式型枠支保工
主に建物の床板（スラブ）のコンクリート打設時に使われます。軽量でありながら高い強度を持つ専用の支保ばり（AXビームなど）を主要部材とします。スラブの厚みに応じて間隔は異なりますが、通常は30cmから36cm程度の間隔で配置されます。

枠組式型枠支保工
建物の外壁面に沿って設置される外部足場に用いられる「建枠」とその関連部材を転用して組み立てられる方式です。既存の資材を有効活用できるメリットがあります。

組立鋼柱式型枠支保工
断面が四角形の頑丈な鋼製柱をボルトで繋ぎ合わせて組み立てる方式です。一本あたりの許容荷重が非常に大きく、20トンにも達するため、主に重構造物が多くなる土木工事の現場で採用されています。

くさび結合式型枠支保工
「システム支保工」とも呼ばれ、部材の接続に「くさび」を用いることが特徴です。柱一本あたりの許容荷重は6.0トン前後と比較的高く、規格化された部材で効率的に組み立てられるため、多くのメーカーから多様な製品が提供されています。代表的なものには、日綜産業の3Sサポート、住友金属建材のTSサポートなどがあります。
支柱は外径60.5mmのものが主流ですが、42.7mmや48.6mmの径のものもあります。水平つなぎ材は、支柱に設けられたフランジと呼ばれる金具に差し込み、くさびを打ち込むことで固定します。また、支柱の上端には「ほぞ」があり、次の支柱を差し込むだけで簡単に高さを継ぎ足せるため、組み立てや解体が比較的容易です。支柱や水平つなぎの長さはメーカーによって異なります。

四角塔式支保工（STシステム）
タワー状に組み上げる方式で、「STシステム」と呼ばれます。基本部材がわずか7点と少なく、組み立て・解体が容易で、クレーンによる一括移動も可能なため、作業効率が大幅に向上し、工期短縮に貢献します。重荷重に対応し、1タワーあたり最大22トンの許容荷重があるため、支保工間の間隔（スパン）を広く取ることができ、その下の作業スペースを広く確保できます。近年、玉掛けを地上で行える特許技術「CST工法」（グリーンリバー株式会社）が開発され、さらに安全かつ効率的な作業が可能となっています。

このように、型枠支保工はコンクリート構造物の精度と安全性を確保する上で極めて重要な役割を担う仮設構造物です。建築物や構造物の種類、規模、要求される品質、そして現場の状況に応じて、最適な方式が選定され、計画・設置されます。

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