垣内繁安

縁と商才に恵まれた豪商、垣内繁安

江戸時代中期の豪商、垣内繁安（かきうち しげやす）は、紀伊国有田郡栖原村に位置する垣内太郎兵衛家の第8代として知られています。彼は、幼名を茂助とし、成長後には清四郎と呼ばれました。繁安の生涯は商業の一直線に加え、文化的な才能にも恵まれていました。彼の起源は享保8年（1723年）にさかのぼります。父は第6代太郎兵衛である垣内繁福であり、繁安は五男として生を受けました。

生活の中で繁安は、幼少期から商業に関与していました。11歳の時には兄が近隣の村で不当な扱いを受けたことに対し、剣を手にして対抗したというエピソードが残っています。彼の強い性格と正義感は、今後の商売にも影響を与えることとなりました。

繁安は、学校教育を受けることなく、血筋による商才を身につけました。最初は叔父である垣内敦義の跡を継ぐ予定でしたが、家族の事情で本家に戻り、商業の中心となりました。享保20年（1735年）に父を亡くし、兄の重恕に商売の責任を委ねられることになりました。その後、14歳で安房国に出て、重恕と敦義が開設した支店で米や麦を扱いながら商業の実践を学びました。

繁安は、安永元年（1772年）からは農業の発展にも力を入れ、沼地の埋め立てや櫨の栽培に取り組みました。また、天明2年（1782年）には江戸新和泉町に支店を移し、砂糖や薬種を扱う事業を開始し、次男に経営を任せるなど、商業の多角化を進めました。70歳を超えた頃、息子の忠質に家督を譲り、以後は「義同」と名乗るようになりました。

繁安の商才は非常に優れており、彼は新たな事業の開発に常に取り組んでいました。しかし、彼の性格は一筋縄ではいかず、厳しい態度で他者を見下すこともあったため、商売において周囲との摩擦を生むこともありました。例えば、資金不足の時に親族からの借金をする際には、その兄弟の態度に憤慨し、必要な資源を全て提供して独立を促しつつも、本家の財政を厳しくする結果を招くこともありました。

晩年は年齢とともに自制する姿勢が見られ、帳簿と向き合う穏やかな日々を送るものの、時折過去の激しい性格が垣間見える場面もありました。文化元年（1804年）に故郷で病気に倒れ、施無畏寺に埋葬されることとなります。彼の墓碑は息子たちによって建てられ、豪商としての名声を残しました。

まとめ

垣内繁安の生涯は、商業活動と家族関係、個人の成長が交錯するドラマティックなものでした。彼の商才と文化的素養は、今なお多くの人に語り継がれています。江戸時代の商人として、豪商として、また一人の人間としての複雑な側面を併せ持った彼の生涯は、多くの教訓を現代に伝えるものです。

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