埋れた青春

埋れた青春

ジュリアン・デュヴィヴィエがメガホンを取り、1954年に製作されたフランス映画『埋れた青春』（原題：L'Affaire Maurizius）は、ドイツの作家ヤーコプ・ヴァッサーマンによる同名小説を映画化した作品です。ダニエル・ジェランが主演を務めた本作は、法廷を舞台にしたサスペンスフルな展開と、登場人物たちの繊細な心理描写が絡み合う恋愛映画として位置づけられています。公開翌年の1955年には、日本のキネマ旬報が選ぶベストテンにおいて、外国映画部門で第4位にランクインするなど、批評家からも高い評価を受けました。

あらすじ

物語は、スイスの美しい街ベルンに暮らす16歳の少年、エツェル・アンデルガストの日常に忍び寄る不穏な影から始まります。ある日、学校帰りのエツェルは、見知らぬ高齢の男性に後をつけられていることに気づきます。その男性は日を追うごとにエツェルへのつきまといを強め、ついにはエツェルの自宅にまで姿を現すようになります。自宅に押しかけてきたその男性は「モリジウス」と名乗り、エツェルの父である高名な検事、ヴォルフ・アンデルガストに宛てた書類を渡します。それは、かつてヴォルフが担当したある裁判に関する、息子の再審を求める上告書でした。

「モリジウス」という聞き慣れない名に、エツェルは父や使用人たちに尋ねますが、皆一様に口を閉ざし、何も語ろうとしません。父の謎めいた沈黙と、周囲の隠し事めいた態度に、エツェルの好奇心は募ります。彼はこの名の由来を探るべく、父方の祖母のもとを訪ねます。祖母は、エツェルが生まれるよりもずっと前、今から18年前にスイス社会を騒がせた大きな事件とその裁判について、重い口を開きます。それは、エツェルの父ヴォルフが検事として関わった、ある人物を巡る複雑な出来事でした。祖母の話を通して、エツェルは「モリジウス事件」と呼ばれるその過去の出来事が、現在の父の態度や、自分につきまとう男性の存在と深く繋がっていることを知ります。そして、その事件の背後に隠された真相、そして父の関与について、少年は探求を始めることになります。

主な出演者

レオナール・モリジウス： ダニエル・ジェラン
エリザベット・モリジウス： マドレーヌ・ロバンソン
アンナ・ハーン： エレオノーラ・ロッシ＝ドラゴ
グレゴワール・ヴァレム： アントン・ウォルブルック
ヴォルフ・アンデルガスト（エツェルの父）： シャルル・ヴァネル
エツェルの父方の祖母： ベルテ・ボオビィ
ピエール・ポール・モリジウス： ドニ・ディネス
エツェル・アンデルガスト： ジャック・シャバッソール
ボビケ夫人： パオラ・ボルボーニ

スタッフ

監督： ジュリアン・デュヴィヴィエ
製作： アンリ・デューチュメイステル
原作： ヤコブ・ワッセルマン
脚本： ジュリアン・デュヴィヴィエ
音楽： ジョルジュ・ヴァン・パリス、ピエール・ラリュー
撮影： ロベール・ル・フェーヴル
編集： マルト・ポンサン
美術： マックス・ドゥーイ
衣裳： ロジーヌ・デ・ラ・メア

評価

本作は、公開当時の日本において高く評価され、1955年に発表された第29回キネマ旬報ベストテンの外国映画部門で第4位を獲得しました。重厚な人間ドラマとサスペンス、そして微かな恋愛要素が織りなす物語は、観る者に深い印象を与えます。

関連情報

この映画は、ヤーコプ・ヴァッサーマンの小説を忠実に映画化しつつ、冤罪の可能性を秘めた過去の事件を若い世代の視点から掘り下げていく構成が特徴です。日本公開は1955年でした。

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