埴生雅章

埴生 雅章

埴生 雅章（はにゅう まさあき）氏は、1948年に富山県小矢部市で生まれた人物です。長年にわたり地方公務員として富山県のインフラ整備や都市環境の創造に貢献し、退職後は宗教家として神社の宮司を務める傍ら、地域の文化活動や防災など、多岐にわたる分野で活動を展開しています。その功績は高く評価され、国の叙勲や専門分野における重要な賞を受章しています。

経歴と公務員としての実績

氏のキャリアは、1972年に東京大学農学部で緑地学を修了したことから始まります。翌1973年、富山県庁に入庁し、2008年までの約35年間、県職員として富山県の発展に尽くしました。この間、都市計画課長や土木部長といった要職を歴任し、県の都市計画や土木事業の推進において中心的な役割を担いました。

特に、県民の憩いの場として親しまれる「富山県民公園太閤山ランド」や、かつての運河空間を魅力的な水辺公園として再生した「富岩運河環水公園」など、富山県を代表する重要な公共事業の計画立案から実現に至る過程で、その手腕を発揮しました。これらのプロジェクトは、富山県の景観形成や県民生活の質の向上に大きく貢献しています。また、専門分野への探求も怠らず、1993年には「雪景形成手法」に関する研究で博士（農学）の学位を取得しており、その専門知識を県土整備にも活かしました。

退職後の活動と地域への貢献

2008年に富山県庁を退職した後も、埴生氏はその豊富な経験と知識を地域社会に還元するため、精力的に活動を続けています。2008年から2015年にかけては、公益財団法人富山県民福祉公園の副理事長として、公園運営における要職を務めました。

また、宗教家として、埴生護国八幡宮の宮司を務めており、地域の伝統や精神文化の継承にも関わっています。加えて、文化、防災、景観といった幅広い分野でリーダーシップを発揮しています。故郷である小矢部市においては、「アートハウスおやべ」のアートプロデューサーとして文化芸術活動を支援し、小矢部市文化財保護審査委員会の会長として地域の貴重な遺産の保護に尽力しています。さらに、富山県防災シニアエキスパート研修会の会長を務め、防災意識の向上や専門家の育成に貢献し、富山県景観賞選定部会の委員としては、美しい県土づくりに寄与するなど、その活動は多岐にわたります。

受章・受賞、そして著作

長年の公務員としての地方自治への献身的な貢献、および退職後の多様な分野での活動が認められ、2018年（平成30年）秋の叙勲において、地方自治功労により瑞宝小綬章を受章しました。これは、氏が富山県の発展に果たした重要な役割が国によって顕彰されたものです。

また、専門分野における業績も評価されており、都市公園や緑地に関する優れた功績に対して贈られる「日本公園緑地協会北村賞」も受賞しています（第34回）。

さらに、氏の知的好奇心と専門性は複数の著作にも結実しています。樹木の知識を網羅した専門書『庭園樹木図鑑』（1976年）や、芸術分野への深い造詣を示す加賀谷武氏の作品集『空間の探索者』（2015年）の監修を手掛けました。また、宮司を務める埴生護国八幡宮に関連する歴史研究として、『木曽義仲と埴生の八幡宮』（2011年）を著すなど、その活動範囲と同様に、著作のテーマも非常に幅広いことが特徴です。

埴生雅章氏は、公務員時代の基盤整備から退職後の地域文化、精神的な側面、さらには学術や芸術に至るまで、多方面にわたる活動を通じて富山県および地域社会に貢献し続けている人物と言えます。

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