埼玉県立児玉白楊高等学校

埼玉県立児玉白楊高等学校は、かつて埼玉県本庄市児玉町金屋に存在した公立の全日制高等学校です。その歴史は、明治時代に養蚕の研究・指導を目的として設立された組織に端を発し、長年にわたり地域の産業教育を支えてきました。校名に冠された「白楊」は、学内に美しい景観を作り出していたポプラ並木の漢名に由来し、学校の象徴として親しまれていました。惜しまれつつも、2023年4月1日、旧埼玉県立児玉高等学校との再編統合により、その歴史に区切りをつけました。本項目では、この「児玉白楊高等学校」として存在した期間を中心に記述します。合併後の新たな埼玉県立児玉高等学校については、別に項目が立てられています。

歴史と沿革

学校の起源は、火力を用いた画期的な養蚕法である「一派温暖育」を考案し、日本の養蚕業の発展に貢献した木村九蔵が、1884年（明治17年）に結成した私塾「養蚕改良競進組」に遡ります。この活動を基盤として、1900年（明治33年）には養蚕学校が開校しました。これに先立つ1899年（明治32年）には、前身となる「競進社蚕業学校」として正式な設置認可を受けており、この年が学校の開校記念日とされています。

開校後、学校は時代の変化とともに教育内容と名称を幾度か変更していきます。1925年（大正14年）には、校名を「競進社実業学校」と改称し、教育の幅を広げました。さらに、1933年（昭和8年）には、専門的な蚕業教育から、より一般的な農業教育へと移行する大きな転換期を迎えます。この教育方針の変更に伴い、1937年（昭和12年）には「埼玉県児玉農学校」と改称されました。

太平洋戦争後の学制改革により、1948年（昭和23年）には「埼玉県児玉農業高等学校」となります。その後、1972年（昭和47年）には埼玉県立へと移管され、農業科に加え機械科が設置されたことで、校名も「県立児玉農工高等学校」と変更され、農業と工業、二つの分野を学ぶ学校となりました。

教育内容の多様化と社会の変化に対応するため、学校はさらに進化を続けます。1988年（昭和63年）には、機械科の一部を電子機械科へと転換し、時代の先端技術を取り入れた教育を開始しました。また、1990年（平成2年）からは各学科で順次男女共学が導入され、より開かれた学びの場となりました。1992年（平成4年）には、園芸科を改組し、環境デザイン科が新設されました。この環境デザイン科も共学でした。そして、1995年（平成7年）、学校は「県立児玉白楊高等学校」と名称を改めます。1999年（平成11年）には、農業科が生物資源科へと転換され、これも共学化されるなど、閉校時まで多様な専門学科を持つ高校として教育活動が行われました。

最終的に、児玉白楊高等学校は生物資源科、環境デザイン科、機械科、電子機械科の4つの専門学科を設置しており、各学科の定員は40名でした。

学校生活と特色

児玉白楊高等学校では、専門教育に加え、様々な学校行事も行われていました。主な行事としては、生徒たちがスポーツを通じて交流を深める体育祭、日頃の学習成果を発表する場でもあった農業センターや工業センターでの実習、学校の文化祭にあたるポプラ祭、生徒の体力を養うロードレース、卒業生を送り出す予餞会、そして球技大会などがあり、生徒たちの学校生活に彩りを添えていました。校名の由来となったポプラ並木は、これらの行事や日々の学びの中で、生徒たちにとって忘れられない風景の一部となっていたでしょう。

交通アクセス

本校へのアクセスは、主に鉄道とバスが利用されていました。JR高崎線の本庄駅で下車し、朝日バスに乗車して「児玉駅入り口」バス停で降り、そこから徒歩で約17分程度でした。また、JR八高線の児玉駅からは、徒歩で約22分ほどの距離に位置していました。

継承

2023年（令和5年）4月1日、埼玉県立児玉白楊高等学校は、埼玉県立児玉高等学校と合併し、新たに「埼玉県立児玉高等学校」として出発しました。この際、名称は旧埼玉県立児玉高等学校のものが引き継がれ、「白楊」の名は公称としては消滅しました。しかし、新設された埼玉県立児玉高等学校は、旧児玉白楊高等学校の校舎や施設を活用しており、形を変えてその教育の伝統と精神は継承されています。

埼玉県立児玉白楊高等学校