堀川口駅

堀川口駅（ほりかわぐちえき）は、かつて愛知県名古屋市港区に位置していた日本の鉄道駅です。具体的には、東海道本線から分岐する貨物専用の支線、通称「名古屋港線」の終点駅として機能し、専ら貨物輸送を取り扱っていました。名古屋港における重要な物流拠点の一つとして、昭和初期から後期にかけて約半世紀にわたり活躍しました。

概要

この駅が設けられていた場所は、名古屋港の中でも堀川の河口にあたる地域、具体的には築地埠頭の一角でした。古くから水運が盛んな堀川と、広大な港湾施設を有する名古屋港が交わるこの地は、鉄道と水運の連携が非常に重要な役割を果たす場所でした。

堀川口駅は、その歴史の中で一度、位置を移しています。現在一般的に知られている、かつての駅の位置は、1954年（昭和29年）1月1日に元の場所から北へ約1.5キロメートルほど離れた場所に移転した後のものです。それ以前、駅は現在の名古屋港ガーデン埠頭の東側付近に位置していたとされています。この移転に伴い、元の駅の機能は隣接する名古屋港駅へと統合されました。

駅の構内には、名古屋港の埠頭へ貨車が直接乗り入れるための引き込み線が敷設されていました。これにより、有蓋車をはじめとする様々な種類の貨車から、船への積み替えや、船から陸揚げされた貨物の積み込みが効率的に行われていました。鉄道による内陸部との迅速な輸送と、港湾での船舶との連携を密接に行うための重要な施設として機能していました。

さらに、堀川口駅は周辺に立地する主要な企業群と鉄道網を結ぶ結節点でもありました。駅からは、三井倉庫、大日本木材防腐名古屋工場、そして住友軽金属工業名古屋製造所といった、当時の名古屋港周辺を代表する産業施設へと向かう複数の専用線が分岐していました。これらの専用線は、各企業の工場や倉庫から生産物や原材料などを鉄道貨物として直接輸送するために不可欠なインフラであり、堀川口駅はそれらの貨物を集約・発送する拠点としての役割を担っていました。

特筆すべき点として、大日本木材防腐線と三井倉庫線の一部区間は、堀川口駅自体が1980年に廃止された後もなお利用が続けられていました。これらの専用線は、隣接する名古屋港駅から分岐する形で、1983年（昭和58年）頃までは存続していたと記録されています。これは、堀川口駅周辺地域における鉄道貨物輸送の需要が、駅の廃止後も一定期間継続していたことを示唆しています。

また、1947年（昭和22年）3月には、駅の近くに堀川口艀溜（はしけだまり）が完成しています。これは、小型船舶である艀（はしけ）が貨物の積み替えのために待機したり、停泊したりするための施設です。この艀溜の整備は、鉄道輸送と艀による水運との連携をさらに強化し、堀川口駅が多角的な物流ネットワークの結節点として機能していたことを物語っています。

歴史

堀川口駅の歴史は、1928年（昭和3年）1月19日に始まりました。この日、東海道本線貨物支線である名古屋港線の一部として、隣接する名古屋港駅から当駅までの区間が延伸開業したのに伴い、駅も同時に営業を開始しました。

開業後、駅は名古屋港の物流拠点としての役割を順調に拡大していきます。1947年（昭和22年）3月には堀川口艀溜が完成し、鉄道と水運の連携体制が強化されました。

そして、1954年（昭和29年）1月1日には、駅は元の位置から北へ約1.5キロメートル離れた場所に移転しました。この移転の具体的な背景は明確ではありませんが、港湾機能の再編や効率化、あるいは周辺の都市開発などが影響した可能性が考えられます。この移転に伴い、元の駅は名古屋港駅の一部として統合される形となりました。

時代の変遷とともに貨物輸送の形態が変化し、鉄道貨物輸送網の再編が進む中で、名古屋港線の貨物輸送量も影響を受けます。最終的に、1980年（昭和55年）10月1日、東海道本線貨物支線である名古屋港線の一部区間（名古屋港駅 - 当駅間）が廃止されることが決定されました。これにより、終端駅であった堀川口駅もその役目を終え、隣接する名古屋港駅に統合される形で廃止となりました。これにより、開業から約52年間の駅の歴史に幕が下ろされることになりました。

隣接駅

堀川口駅が現役であった頃、東海道本線貨物支線（名古屋港線）において、隣接する駅は以下の通りでした。

* 東海道本線（名古屋港線）
名古屋港駅 - 堀川口駅

これは、名古屋港駅から分岐して堀川口駅に至る単線の貨物支線であったことを示しています。

その他

堀川口駅の跡地が現在どのような状況にあるか、また駅廃止後の地域の変化について詳細な情報が多くは残されていません。しかし、かつてこの地に存在した鉄道貨物駅が、名古屋港の発展と周辺産業の物流を支える上で重要な役割を果たしていたことは間違いありません。廃止された専用線の一部が駅廃止後も数年間利用されていたという事実は、その地域における鉄道輸送の根強い需要、あるいは代替輸送手段への転換に一定の時間を要したことを示唆しています。日本の近代産業史、特に港湾物流の歴史を語る上で、堀川口駅は忘れられない存在の一つと言えるでしょう。

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