堀慶末

堀慶末（ほり よしとも）の生涯：連続殺人犯の深層

生い立ちと家族

1975年、岐阜県に生まれた堀慶末は、在日韓国人の父と日本人の母を持つ家庭の五男でした。幼少期は紫斑病を患い、入退院を繰り返しました。父親は事業を営む一方で、家庭内では暴力を振るい、浮気を繰り返すなど、家庭環境は安定しませんでした。小学校入学前に両親は離婚。その後、母親と共に県営住宅に転居し、転校を経験。サッカーに熱中する一方で、家庭環境や転校によるストレスから非行に走ることもありました。中学校では、部活動を巡るトラブルや教師からの体罰を経験し、不登校となります。

結婚と仕事、そして転落

中学校卒業後、定時制高校に入学するもすぐに退学。兄の仕事を手伝う中で、スナックのホステスと結婚し、子供をもうけます。しかし、結婚生活は長く続かず、不倫やギャンブルに溺れるようになります。その後、複数の女性との交際、借金、無免許運転など、堕落した生活を送る中で、犯罪へと手を染めていきます。

碧南事件

1998年、堀は仕事仲間の男2人と共謀し、愛知県碧南市でパチンコ店長夫婦を殺害する事件を起こします。金の工面に困った堀が、強盗目的で計画したものでした。この事件後、堀は離婚。その後も怠惰な生活を続け、窃盗などを繰り返します。事件発生から10年以上が経過した後、DNA鑑定技術の発達により、堀の犯行が明らかになります。

守山事件

2006年には、共犯者と共に名古屋市守山区で高齢女性宅に押し入り、強盗殺人未遂事件を起こしました。かつて自分が関わったリフォーム工事の家を狙った犯行でした。

闇サイト殺人事件

2007年、インターネットの闇サイトで知り合った男2人と共謀し、名古屋市で帰宅途中の会社員女性を拉致・殺害する事件を起こします。金銭目的で計画されたもので、被害者は拉致された後、殺害され、遺体は山中に遺棄されました。この事件で逮捕された堀は、強盗殺人罪などで起訴され、第一審で死刑判決を受けますが、控訴審で無期懲役に減刑されました。

裁判と死刑確定

闇サイト殺人事件で無期懲役が確定した後、碧南事件と守山事件への関与が発覚し、再び逮捕・起訴されます。これらの事件で、堀は再び死刑判決を受け、上告も棄却され、2019年に死刑が確定しました。

獄中での活動

堀は獄中で、文学作品や絵画を創作するなど、表現活動を続けています。また、自身の過去を振り返った手記を出版し、話題を呼びました。これらの作品は、死刑囚の心情や内面を表現する試みとして、注目を集めています。

人物像

堀は、幼少期から家庭環境に恵まれず、非行に走るなど、不安定な生活を送っていました。自己中心的で、快楽に溺れやすい一面があり、金銭欲に囚われて犯行を繰り返しました。一方で、裁判では被害者遺族に謝罪の言葉を述べたり、獄中では創作活動をしたりするなど、複雑な人物像が浮かび上がります。

共犯者の証言

堀の共犯者たちは、彼のことを「仕事はできるが、女癖が悪く、他人を見下す性格」と評しています。また、闇サイト事件の共犯者は、堀を「物静かだが、強い利欲目的を持っている人物」と評しています。

参考文献

中尾幸司『絶望裁判 平成「凶悪事件&異常犯罪」傍聴ファイル』
読売新聞社会部『死刑』
司法研修所 編『裁判員裁判における量刑評議の在り方について』
年報・死刑廃止編集委員会『極限の表現 死刑囚が描く 年報・死刑廃止2013』
大崎善生『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』
堀慶末『鎮魂歌』
NHK「事件の涙」取材班『娘を奪われたあの日から 名古屋闇サイト殺人事件・遺族の12年』
年報・死刑廃止編集委員会『コロナ禍のなかの死刑 年報・死刑廃止2020』

関連情報

堀と闇サイト事件・夫婦強殺事件・強殺未遂事件 - 闇サイト殺人事件の被害者遺族によるウェブページ
死刑廃止国際条約の批准を求める FORUM90

まとめ

堀慶末は、複数の殺人事件に関与し、最終的に死刑が確定した人物です。彼の人生は、社会の闇や犯罪の深層を映し出す鏡として、様々なことを私たちに問いかけています。彼の事件は、犯罪の根源や、社会の歪みについて考える上で、重要な事例と言えるでしょう。

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