塗られた本

塗られた本

松本清張による長編小説『塗られた本』は、1962年から1963年まで『婦人倶楽部』に連載され、1984年に講談社ノベルスから出版されました。この作品は、小さな出版社を経営する女性社長の野心と愛の葛藤を描いたサスペンス・ロマンです。また、2007年にはテレビドラマとしても制作されています。

あらすじ

物語は、紺野美也子という女性が社長を務める小さな出版社から始まります。彼女は売れっ子作家の青沼禎一郎に原稿執筆を依頼しますが、当初は無名の出版社からの大胆な要求に青沼は驚きます。しかし、美也子は女性特有の魅力と巧みな交渉術を駆使し、青沼を説得していきます。美也子は、純粋な心を持つ夫・卓一の詩集を出版することを目指しており、そのために彼女は必死に資金を集めようとします。

彼女はR銀行の頭取である井村重久に融資を頼むのですが、井村は実は彼女の結婚前からの愛人です。美也子の内面には愛と野心が交錯しており、彼女は井村との関係を利用して資金を調達しようとします。そんな中、井村から一泊旅行に誘われ、やがて二人で旅に出ることになります。

しかし、旅先で思わぬトラブルが生じ、美也子は自身の行動を疑う女性たちに囲まれ、次第に窮地に追い込まれていきます。彼女の心には葛藤と緊張が交錯し、運命的な展開が待ち受けることになります。

主な登場人物

• - 紺野美也子：小さな出版社「メディア出版」の社長で、過去には銀座で水商売をしていた経験を持つ。
• - 紺野卓一：美也子の夫で、少年時代から詩を書き続けている作者。病気により療養中。
• - 青沼禎一郎：流行作家で、美也子に促されて原稿を書き始める。
• - 井村重久：R銀行の頭取で、美也子の昔の愛人。妻と別居中。
• - 谷尾重夫：青沼とは異なるが同様の作風を持つ流行作家。
• - 野見山房子：新進気鋭の女優で、青沼と接触を持つことで何らかの意図を抱いている。

テレビドラマ

2007年12月17日には、TBS系列の「月曜ゴールデン」にて『塗られた本』がスペシャルドラマとして放映されました。このドラマは原作とは異なるオリジナルの結末を迎え、キャストには沢口靖子や勝村政信らが名を連ねました。

まとめ

『塗られた本』は、松本清張の鋭い観察眼とサスペンスの手法が光る一作です。野心と愛情、葛藤と運命が交錯する中で、登場人物たちの心理が深く掘り下げられています。この作品は、読者に強烈な印象を与え続けており、映像化されたドラマでもその魅力は引き継がれています。

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