塚本勲

塚本勲：朝鮮語学の泰斗、その生涯と業績

塚本勲（1934年7月30日 - ）は、日本の朝鮮語学者であり、翻訳家としても知られています。元大阪外国語大学教授であり、朝鮮語研究の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと学問への道

大阪市生野区で生まれ育ち、在日韓国・朝鮮人が多い地域で幼少期を過ごしました。大阪府立天王寺高等学校を卒業後、京都大学文学部言語学科に進学し、大学院博士課程を修了しました。日本語の起源に興味を持ったことがきっかけで朝鮮語の研究を始めます。

朝鮮語研究のパイオニアとして

塚本勲は、戦後の日本において朝鮮語研究の先駆者の一人でした。1963年、大阪外国語大学に新設された朝鮮語学科の専任講師として迎えられました。当時、国公立大学で朝鮮語専門の学科は初めてであり、その創設に尽力しました。

『朝鮮語大辞典』編纂という偉業

塚本勲の最大の業績は、23年の歳月をかけて完成させた『朝鮮語大辞典』です。大学内外の協力を得ながら、資金不足などの困難を乗り越え、1986年に刊行されました。約21万語という膨大な語彙数を誇り、当時世界最大の朝鮮語辞典として高く評価されました。この辞典は、日本翻訳文化賞も受賞しています。

社会への貢献：翻訳と資料の寄贈

また、塚本勲は翻訳家としても活躍し、特に『ユンボギの日記』の日本語訳はベストセラーとなりました。朴正熙政権下の韓国における貧困の実情を訴え、日韓関係に大きな影響を与えました。長年にわたり収集した朝鮮語の図書や資料は大阪府立中央図書館に寄贈され、「塚本文庫」として一般公開されています。これらの資料は、朝鮮半島の歴史や文化、思想を知る上で貴重な資源となっています。

人となり

塚本は、研究のために私財を投げ打つことも厭わず、常に情熱を持って朝鮮語と向き合ってきました。その過程では、資金調達に苦労したり、政治的な対立に巻き込まれたりすることもあったそうです。しかし、学生たちの協力に支えられ、研究を続けることができました。また、大島渚監督との交流や、毎日新聞との関わりなど、様々な人々との出会いがありました。

ハングル塾の開講と晩年

大阪外国語大学を退官後も、塚本勲は研究活動を続け、自宅で一般向けの「ハングル塾」を開講しました。85歳になった2019年の時点でも、その眼光は鋭く、健在ぶりを示していました。

著作一覧

『朝鮮語入門』岩波書店 1983
『朝鮮語を考える』白帝社 2001
『日本語と朝鮮語の起源』白帝社 2006
『朝鮮語大辞典』大阪外国語大学朝鮮語教室編（責任編集者）角川書店、1986
* 翻訳『ユンボギの日記 あの空にも悲しみが』太平出版社 1965年

塚本勲の生涯は、朝鮮語学の研究と日韓の文化交流に捧げられたものでした。その功績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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