塚本学

塚本学（つかもと まなぶ）

塚本学は、1927年1月14日に福岡市で生まれ、2013年4月12日に86歳で亡くなった日本の歴史学者です。専門は日本近世史と地方史であり、国立歴史民俗博物館の名誉[[教授]]を務めました。彼の研究は、歴史学と民俗学の境界を越え、江戸時代の文化や社会、人々の生活に新たな光を当てるものでした。

生い立ちと学歴

塚本は、福岡市で熊沢尚文の次男として生まれましたが、出生前に父方縁戚の塚本家との間で養子縁組が約束されていました。旧幕臣の塚本明毅の三男である塚本明籌の養子となり、塚本姓を名乗ることになりました。この養子縁組は、塚本の最後の著書が戸籍上の祖父である塚本明毅の評伝となったことにも影響を与えました。

福岡県立修猷館中学校、旧制福岡高等学校を経て、1950年に東京大学文学部国史学科を卒業しました。

研究活動

塚本の研究は、「明治用水史誌」の編纂主任として地方史研究から始まりました。その後、愛知県の公立高校教諭を経て、1970年に信州大学人文学部の助[[教授]]に就任し、後に教授となりました。1981年からは国立歴史民俗博物館の民俗研究部教授を兼任し、1983年からは同博物館の歴史研究部教授として、1992年に定年退官するまで務めました。

主な業績

塚本の研究は、地方史の視点から近世社会を捉え直すものでした。特に、江戸時代の都市と農村の関係、生活文化、民俗信仰、動物と人間の関わりなど、多岐にわたるテーマに取り組みました。

『地方文人』(1977年): 地方における文化人の役割や活動を描いています。
『生類をめぐる政治：元禄のフォークロア』(1983年): 元禄時代の生類憐みの令を、民俗学的視点から分析しています。
『近世再考 地方の視点から』(1986年): 近世史研究における地方史の重要性を強調しています。
『江戸のあかり：ナタネ油の旅と都市の夜』(1990年): 江戸時代の照明文化に着目し、ナタネ油の流通と都市の夜の様子を描いています。
『都市と田舎 日本文化外史』(1991年): 都市と農村の文化的な差異と相互関係について論じています。
『小さな歴史と大きな歴史』(1993年): 日常生活における歴史的意味を考察しました。
『江戸時代と人と動物』(1995年): 江戸時代における人と動物の多様な関係について考察しました。
『徳川綱吉』(1998年): 徳川綱吉という人物を、政治的側面だけでなく、文化的側面からも捉えています。
『生きることの近世史：人名環境の歴史から』(2001年): 人名を通じて近世社会の歴史を考察しています。
『塚本明毅：今や時は過ぎ、報国はただ文にあり』(2012年): 養祖父である塚本明毅の評伝であり、幕末から明治への変革期を生きた人物像を描いています。

また、共編著として『愛知県の歴史』や『列島文化再考：歴史学と民俗学』など、多数の著作があります。これらの著作を通して、歴史学と民俗学の融合を試み、新たな学問領域の開拓に貢献しました。

晩年

塚本は、2013年4月12日に心不全のため86歳で亡くなりました。その生涯は、地方史研究から始まり、江戸時代の社会と文化を多角的に捉え直すことで、歴史学に新たな視点をもたらしたものでした。没後も、彼の著作は多くの研究者や学生に読まれ続けています。

参考文献

* 小池淳一「〈資料紹介〉ある歴史家の自画像：塚本学との対話」『国立歴史民俗博物館研究報告』第219巻、2020年。

この資料は、塚本の生涯と業績について詳細に記述しており、彼の研究を理解する上で貴重な情報源です。

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