塩化ベンザルコニウム

塩化ベンザルコニウム (benzalkonium chloride)

塩化ベンザルコニウムは、陽イオン界面活性剤に分類される化合物で、特に消毒目的で広く使用されています。この物質は、示性式 C6H5CH2N+(CH3)2R•Cl−（R = C8H17～C18H37）で表される四級アンモニウム塩の混合物であり、逆性石鹸としての役割を持っています。水溶液は日本薬局方に収載されており、殺菌・消毒剤として日常的に利用されています。

用途

塩化ベンザルコニウムは、手指や粘膜の消毒、さらには器具の消毒にも利用されます。消毒効果については、以下の通りです。

• - グラム陽性菌・グラム陰性菌: 一般的に有効
• - 真菌: 一部には効果が見られるが、無効なものも存在
• - エンベロープウイルス: 一部有効、一部無効なものがある
• - 緑膿菌、バークホルデリア・セパシア、セラチア、アクロモバクター・キシロソキシダンス: いずれも抵抗性または無効
• - 結核菌・マイコバクテリウム属: 無効
• - その他のウイルスや芽胞を持つ細菌: 無効

塩化ベンザルコニウムは、逆性石鹸剤としての特性から、陰イオン界面活性剤と混合するとその効果が減少するため、使用時は注意が必要です。また、外用消毒剤であるため、経口摂取や浣腸には適していません。

作用機序

この化合物の特徴的な作用機序は、細菌の細胞膜に吸着し、膜の流動性を増加させることで細胞膜を破壊することです。さらに、細胞内の酵素機能を不活性化し、タンパク質を変性させることで、殺菌作用を示します。特に、アルキル側鎖がC12H25の塩化ベンザルコニウム（通称: BDDAC）が有機物の存在下で最も強い効果を発揮します。

合成法

この化合物は、アルキルアミンをアセトアルデヒドまたはギ酸と反応させ、その後塩化ベンジルと反応させて合成されます。この過程を経て、最終的に塩化ベンザルコニウムが得られます。

安全性と毒性

塩化ベンザルコニウムは、魚や水生無脊椎動物に対して毒性を示し、特に濃度が高い場合には注意が必要です。経口毒性については、ラットやマウスで中等度の毒性を示し、推定致死量は人間で30 - 400mg/kgとされています。また、眼に対して刺激性があるため、取り扱いには慎重を要します。

コンタクトレンズとの関係

コンタクトレンズ用の液体の中には、塩化ベンザルコニウムを防腐剤として少量含んでいることがあります。しかし、この成分はコンタクトレンズに吸着しやすく、使用する際には注意が必要です。吸着したレンズを使用し続けると、角膜上皮に損傷を与える恐れがあります。したがって、塩化ベンザルコニウムを含む点眼薬を使用する際は、コンタクトレンズを外してから使用することが推奨されています。

商品名

この物質は、以下のような商品名でも販売されています：

• - オスバン（Osvan）
• - ウエルパス（Welpas）
• - ロッカール（Roccal）
• - ベルコムローション
• - ザルコニン液
• - ザルコノック
• - ヂアミトール
• - オロナイン-K

以上のように、塩化ベンザルコニウムは多岐にわたる用途を持つ化合物であり、特に消毒においてその効力を発揮しますが、安全性や使用方法について理解した上で適切に使用することが重要です。

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