増井禎夫

増井 禎夫

増井 禎夫（ますい よしお、1931年1月1日 - 2024年4月18日）は、日本に生まれ、後にカナダ国籍を取得した著名な細胞生物学者です。トロント大学名誉教授であり、イギリスの王立協会フェローにも選出されました。

業績

増井氏の最大の功績は、1971年にカエルの卵を用いた独創的な研究から、卵成熟促進因子（maturation promoting factor, MPF）を発見したことにあります。このMPFは、当初は卵の成熟を引き起こす因子として同定されましたが、その後の研究によって、細胞が分裂する際の周期を普遍的に制御する中心的な因子であることが明らかになりました。MPFの発見は、1980年代後半から始まる細胞周期研究の爆発的な進展の基礎となり、この分野の研究に決定的な貢献を果たしました。

また、増井氏は細胞分裂抑制因子（cytostatic factor, CSF）の発見にも寄与しました。CSFは、特定の条件下で細胞周期を停止させる働きを持つ因子です。

さらに、細胞の成分を試験管内で解析するための強力なツールとして、カエル卵の無細胞抽出液系の開発にも貢献しました。この無細胞系は、生きた細胞を用いずに細胞周期やその他の生物学的プロセスを再現・解析することを可能にし、分子レベルでの機構解明に不可欠な手法となりました。

略歴

1931年1月1日、京都府に誕生しました。旧制京都二中から旧制京都一中特別科学学級へ転校し、第三高等学校を経て、1953年に京都大学理学部生物学科を卒業しました。1955年には京都大学大学院理学研究科修士課程を修了。

同年、甲南大学理学部生物学科の助手として研究者のキャリアをスタートさせました。1958年には同大学の講師に昇任。1961年には京都大学より理学博士号を取得しました。1965年に甲南大学理学部生物学科の助教授に就任した後、1966年にはアメリカ合衆国のイェール大学へ留学。

1969年からはカナダへ移り、トロント大学の準教授となりました。1978年から1997年まで同大学の教授を務め、多くの研究者を育成しました。1997年にトロント大学名誉教授の称号を授与されました。

受賞歴

その卓越した研究成果は高く評価され、数々の権威ある賞を受賞しています。

1990年 - マニング・イノベーション賞
1992年 - ガードナー国際賞
* 1998年 - アルバート・ラスカー基礎医学研究賞

2024年4月18日に逝去しました。増井禎夫氏の細胞周期研究における先駆的な発見は、現代生物学において今なおその重要性を失っていません。

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