増島拓哉

増島 拓哉

増島拓哉（ますじま たくや）は、1999年に日本の大阪府で誕生した小説家です。生まれ育った大阪府豊能郡豊能町を現在も生活・創作の拠点としています。

経歴

大阪府立北野高等学校（第129期生）を卒業後、関西学院大学法学部に進学し、学業と並行して執筆活動を続けています。彼の作家としてのキャリアは、大学に在学中の2018年に始まりました。投稿作「闇夜の底で踊れ」が、若手作家の登竜門として知られる第31回小説すばる新人賞に輝き、鮮烈なデビューを飾りました。この時の応募名義は「若利恒一」でしたが、受賞決定後に現在の「増島拓哉」へと改名しています。

人物と創作の背景

増島氏は、自身の創作に大きな影響を与えた作家として、筒井康隆、横溝正史、安部公房、大沢在昌、津原泰水といった、多岐にわたるジャンルの大家たちの名を挙げています。

幼少期は、絵本よりも漫画に親しむ子供でした。特に手塚治虫作品に深く没頭しており、手塚氏もまた北野高校の出身であることは興味深い一致です。増島氏が初めて読んだ手塚作品として挙げているのは『ワンダー3』です。やがて活字にも興味を持ち始め、コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの嚆矢である『緋色の研究』を皮切りに、ホームズやアルセーヌ・ルパン、怪人二十面相といった古典的な探偵・怪盗小説、さらには星新一のショートショートなど、幅広いジャンルの作品を貪欲に読み進めました。

小説家になりたいという漠然とした憧れは、小学校時代から抱いていたといいます。小学校の卒業アルバムには、将来の夢として「小説家」と記していたことを後に明かしています。小説の世界に本格的にのめり込む契機となったのは、中学1年生の時に筒井康隆の『家族八景』に出会ったことです。その特異な世界観に魅了された彼は、さらに読書を深めていきました。そして、高校在学中に大沢在昌のハードボイルド作品『新宿鮫』を読んだことで、プロの小説家を具体的に目指す強い決意を固めたと語っています。

北野高校在学時には文芸部に所属し、執筆活動の基礎を築きましたが、長編小説として初めて本格的に取り組んだのは、大学進学後に構想を練り始めたデビュー作『闇夜の底で踊れ』でした。

主な作品

増島拓哉氏の主な単行本作品には、デビュー作である『闇夜の底で踊れ』（集英社、2019年単行本刊行、2021年集英社文庫より文庫化）と、それに続く『トラッシュ』（集英社、2021年刊行）があります。

これらの単行本作品に加え、文芸誌『小説すばる』などを中心に、精力的に短編や連載を発表しています。特に「トラッシュ」シリーズは、『小説すばる』誌上で2019年から2021年にかけて複数回にわたり掲載されました。また、2023年11月号からは「路、爆ぜる」の連載を開始しています。

創作活動は小説にとどまらず、自身の内面や経験を綴ったエッセイも発表しており、『小説すばる』掲載の「増島拓哉ができるまで」や、『別冊文藝春秋』掲載の「おじいの思い出」などがあります。さらに、大沢在昌氏や黒川博行氏といった日本の小説界を代表する作家たちとの対談も行っており、若手ながらベテラン作家とも積極的に交流を深めている様子がうかがえます。

関西学院大学に在籍しながらも、精力的に執筆活動を続け、次々と新たな作品を発表している増島拓哉氏は、今後の日本の文学界を担う存在として注目されています。

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