増本伎共子

増本 伎共子

増本 伎共子（ますもと きくこ、1937年2月2日生まれ）は、日本の現代音楽界において重要な足跡を残す作曲家であり、また音楽民族学者としても知られています。東京都の出身です。

経歴

幼少期より音楽に親しみ、子供のための音楽教室で作曲家・音楽学者の柴田南雄氏に基礎を学びました。この教室は現在の桐朋学園大学音楽学部附属子供のための音楽教室の前身にあたります。その後、桐朋学園大学に進学し、作曲を別宮貞雄氏に師事することでその才能を開花させます。大学卒業後、母校である桐朋学園大学で教鞭を執り、長年にわたり多くの後進の指導にあたりました。現在は同大学の名誉教授の地位にあります。

受賞歴

作曲家としての功績は数々の受賞によって称えられています。1986年には、自身のオペラ作品である室内歌劇「浅茅ヶ宿」が、優れた舞台芸術創作作品を表彰する第9回舞台芸術創作作品奨励特別賞のオペラ部門に選ばれました。さらに1994年には、北原白秋の詩に基づいた歌曲集「白秋の世界」が、第5回奏楽堂日本歌曲コンクールにおいて作曲部門の第1位を獲得しています。これらの受賞は、増本氏の劇音楽や声楽作品における優れた表現力、特に日本の文学や古典を題材とする際の深い洞察力と創造性を示しています。

主な作品

増本氏の創作活動は多岐にわたり、様々な編成やジャンルの作品を生み出しています。

オペラ: 受賞作である室内歌劇「浅茅ケ宿」のほか、日本の古典文学に題材を得た室内歌劇「羽衣伝説」などがあります。
現代邦楽: 日本の伝統楽器の可能性を追求する作品も数多く手掛けています。箜篌のための「アルカイック・フレーズ」、子ども向けの和楽器を用いた「子どものための和楽器エチュード」、箏のための「序奏・うた・終曲」、二面の箏と二管の尺八のための「小さな風」などがあります。また、雅楽鑑賞の入門となる著書としても知られる「嬉遊楽」もこの分野に関連が深い作品と言えます。
室内楽曲: ヴィオラ・ダ・ガンバ・コンソートのための「宮廷のさざめき」、マンドリンアンサンブルのための「星座」など、多様な楽器編成の作品があります。
器楽曲: 特定の楽器のための独奏曲も作曲しています。リコーダーソロのための「牧歌」、フルートソロのための「乱声」、モダンチェンバロのための「タペストリー」、ヴィオラ・ダモーレのための「朗詠」などです。
* 声楽曲: 文学作品にインスパイアされた作品が多く見られます。「枕草子による歌曲」、女声合唱のための「梁塵秘抄」といった古典文学に基づく作品や、受賞作にもなった「北原白秋の詩による六つの歌曲」など、日本の詩や文学を題材にした歌曲、合唱曲を手掛けています。

著書

作曲活動と並行して音楽民族学者としても活動しており、その知見は著書にもまとめられています。代表的なものとして、『雅楽入門』（音楽之友社）があります。これは、日本の伝統音楽である雅楽への深い造詣を示すものです。

増本伎共子氏は、洋楽の技法を基盤としつつ、日本の伝統音楽や文学への敬意を払った作品を生み出すことで、独自の音楽世界を構築してきました。その業績は、今後の日本の音楽史においても重要な位置を占めるでしょう。

参考文献および外部リンク

増本氏に関する情報は、Pamela Youngdahl Deesによる『A Guide to Piano Music by Women Composers: Women born after 1900』(2004年)や、John Tyrrell編の『The new Grove dictionary of music and musicians: Volume 16』(2001年)などの専門書にも収録されています。

また、増本伎共子氏の公式ホームページも存在し、より詳細な情報を得ることができます。

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