墨俣輪中

墨俣輪中（すのまたわじゅう）について

墨俣輪中は、岐阜県南西部に位置し、木曽三川流域の特異な地形を持つ地域です。この輪中は、主に岐阜県安八郡安八町北部と大垣市墨俣町にまたがるエリアで構成されており、周囲を長良川や揖斐川、中須川および犀川といった河川によって囲まれています。明治時代にはこの地域が「結輪中」とも呼ばれ、さらに細分化されて「墨俣輪中」として位置づけられることが多くありました。

地理的特性

墨俣輪中は、揖斐川と長良川が接近する場所にあり、複数の支流が流れることで小さな輪中が作られました。このため、地形的には非常に複雑であり、1950年に安藤萬寿男が著書の中で「網状小型輪中地域」と表現したように、数多くの小輪中が存在しています。特に墨俣輪中と福束輪中の間にはいくつかの小輪中が相互に影響しながら形成されており、本稿ではこの地域一帯を広く取り上げます。

また、地理的な観点からは、河川沿いに建設された堤防によって輪中が分割され、森部輪中と中須輪中もそれぞれ複数の小さな輪中に分けられることがあります。

歴史的背景

輪中の形成過程

墨俣輪中を含む地域は、もともと揖斐川と長良川に挟まれる場所にあり、人々は水の脅威と向き合いながら自然堤防の上に集落を形成していました。この地域では、鎌倉時代に荘園の開発が行われ、その影響で堤防の整備が始まることとなります。江戸時代には1619年に福束輪中が設立され、その後、墨俣輪中も順次成立していきました。

1965年には墨俣輪中の堤防が完成したとされ、地域内の水害防止に寄与したものの、南側の堤防は周辺の水防上の懸念から整備が進まずにいました。

この地域では1665年に森部輪中が懸廻堤を完成させ、その後に続く形で1668年に墨俣輪中も堤防の整備が行われました。このような活動を経て、1705年までには牧輪中なども形成されました。

遊水地の開発と新輪中の設立

早期の3輪中の成立があったことにより、周辺地域には土砂が堆積し、土地が高くなることから新輪中の開発が進められました。しかし、1754年の宝暦治水によって水位が上昇し、水の排水が困難になる事態が発生してしまいます。この影響で新たな輪中の形成は長い間進まなかったのです。

その後、宝永年間には中村輪中や中須輪中の堤防が整備されてゆきましたが、新たな懸廻堤の完成には周辺の理解を得るのが容易ではなく、最終的に1831年に中村輪中、1860年に中須輪中が懸廻堤を完成させることになります。

近代の変化と問題

明治時代には木曽三川分流工事が行われ、中須川や中村川が締め切られることで、福束輪中から墨俣輪中を一体としたエリアが継続的に陸続きとなりました。しかし、地域一帯の水害を防ぐための改修案が幾度となく提案されても、地元の反発に直面して実現には至らないことが多々ありました。

特に1929年には住民の抗議が刑事事件として発展し、結果的に改修計画は再設計されることとなりました。これにより、墨俣輪中の周辺には新たな川が開削されることとなりました。

現在の状況

近年、長良川沿いには新しい堤防が建設されていますが、中須川や中村川が閉じられたことから、元々の堤防の役割を終えた部分も存在しています。また、1976年には大規模な水害が発生し、旧森部輪中の堤防が決壊して広範囲が被災する事態が起こりました。これに対して、いくつかの地域では旧堤防の残存部分を利用した防水策が取られるなど、地域住民の創意工夫が見られました。

最後に、墨俣輪中はその成立が遅れた中須輪中や北今ケ淵輪中といった相対的に高い地域に比べて大きな被害を被りましたが、そんな状況下でも地域の歴史や地形の変化を反映した貴重な文化として大切にされています。

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