壺井義知

壺井義知（つぼい よしちか、または、よしとも）は、明暦3年（1657年）に生まれ、享保20年（1735年）に没した、江戸時代中期に活躍した有職故実家です。河内国（現在の大阪府東部）の出身で、初めは韶政と名乗りました。字は子安、通称は安左衛門といい、鶴翁、鶴寿と号しました。また、温故軒という堂号も持っていました。

若い頃には、信州（現在の長野県）や加賀（現在の石川県南部）を遍歴し、その後、京都に出てきました。貞享2年（1685年）には、四辻家に仕え、平田内匠から官職に関する知識を学びました。彼は公家の典拠や故実について深く理解しており、その知識を活かして多くの著述を残しました。

壺井義知は、特に装束に関する研究に力を入れていました。例えば、装束の文様の一つである蝶丸が、蚕を意味し、子孫繁栄の象徴であるというように、文様の持つ意義を深く考察しました。その研究成果は高く評価され、霊元上皇に天覧に供された際には、「その論弁は明晰かつ正しい」と褒められ、女房奉書を下賜されたと伝えられています。この天覧に関する記述は、蓬左文庫所蔵の書物の奥書や、『関秘録』にも見ることができます。

著書としては、『官職浮説或問』（宝永6年（1709年））、『職原抄弁疑私考』、『装束要領抄』、『文飾推談』などが挙げられます。これらの著作は、当時の有職故実の研究において重要な資料となっています。また、彼は和歌にも秀でており、多才な人物であったことが伺えます。

壺井義知は、有職故実家として、その深い知識と研究によって、江戸時代の文化に大きく貢献した人物と言えるでしょう。彼の残した著作や研究は、現代においても貴重な資料として尊重されています。

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