夏の嵐 (1954年の映画)

夏の嵐

『夏の嵐』（なつのあらし、原題: Senso）は1954年に公開されたイタリア映画で、監督は名匠ルキノ・ヴィスコンティです。この映画は、イタリアの著名な作家カミロ・ボイトの短編小説『官能』を基にしています。物語は、1866年のオーストリア占領下のヴェネツィアを舞台に、伯爵夫人リヴィアとオーストリア軍の若い軍人フランツとの禁断の恋愛を描いています。映像はテクニカラーで撮影され、ビスタサイズのフォーマットで121分間の作品となっています。

ストーリー概要

物語は、オーストリア軍がヴェネツィアを占領している時代に設定されており、リヴィアは名家に生まれた美しい女性です。彼女は従兄のロベルト侯爵がオーストリア軍の中尉フランツ・マーラーと決闘することを知り、その凶事を未然に防ぐためにフランツを呼び寄せます。彼女の巧妙な交渉により決闘は回避されますが、フランツの密告によってロベルトは捕らえられ流刑にされてしまいます。

彼女の心は重苦しい運命に支配される中、リヴィアはフランツと再会し、彼に強く惹かれていきます。秘密の部屋で密かに逢い重ねるうちに、彼女の恋情はますます深まり、戦争の影が彼らの関係に迫り来るのです。しかし、フランツはある日約束の時間に現れず、リヴィアは彼の宿舎を訪れると、思わぬ現実を知らされます。彼は浮気癖のある男であり、これによって彼女は深く傷つくのです。

事態は次第に悪化していきます。リヴィアはフランツのことで心を悩ませながらも、ついにアルデーノに向かうことになります。そんな中、フランツが突然彼女の前に現れ、リヴィアの胸の内は再び騒がしくなります。彼女はフランツに対する強い愛情から、ロベルトが預けた義援金を使って彼を除隊させるための資金に変えてしまいますが、フランツは彼女を裏切る行動に出るのです。

そして、リヴィアは最後の選択を迫られます。彼が娼婦と一緒にいる場面を目撃した彼女は、怒りと悲しみのあまり、フランツを軍に密告し、彼は非情にも銃殺刑にされる結末を迎えます。リヴィアはフランツの名を叫びながら、暗い夜道をさまよっていくのです。

キャストと制作背景

『夏の嵐』は、さまざまな要素が組み合わさった作品であり、ヴィスコンティは本作の制作にかなりの情熱を注ぎました。彼は当初、別の題材を準備していましたが、予備検閲の結果中止となり、本作に取り組むこととなりました。出演者については、当初マーロン・ブランドやイングリッド・バーグマンを主演に考えていたものの、実現には至りませんでした。

重要なキャラクターであるウッソーニ侯爵は、物語の鍵を握る立場に位置していたものの、出番は少なく、ヴィスコンティ自身もその扱いには苦悩を感じていたといいます。さらに、映画の中で使用される音楽は、アントン・ブルックナーの交響曲第7番で構成され、主に1楽章と2楽章が用いられています。この作品は日本で初めて公開されたヴィスコンティの長編映画でもあり、のちに彼の代表作として評価され、イタリア映画の重要な一編と見なされています。公開当時は日本であまり注目されなかったものの、評価は時間と共に高まっていったことでも知られています。

本作を通じて、ヴィスコンティの独特の映像美や強いドラマ性が表現されており、今日に至るまで多くの映画ファンに影響を与える作品となっています。

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